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シニアの恋愛と会話術:話をすり替える癖との上手な付き合い方

「また自分の話ばかり」。そう感じたことはありませんか?長年連れ添ったパートナーとの会話でも、新しく出会った方とのお茶の時間でも、相手が自分の話にすり替えてしまう場面に遭遇することがあります。若い頃なら「まあ、そういう人もいるわね」と軽く流せたことも、人生経験を重ねた今だからこそ、深く考えてみたい。今日は、この「自分の話にすり替える」という会話の癖について、シニアの皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

人生の後半戦で気づく、会話の大切さ

定年を迎えて、毎日顔を合わせる時間が増えた。あるいは、配偶者を亡くして新しい出会いを求めている。または、長年の結婚生活に疲れて熟年離婚を考えている。シニアの恋愛や人間関係は、若い頃とは違う複雑さと深みを持っています。

だからこそ、会話の質が重要になってくるんですね。若い頃は見た目や勢いで乗り切れたことも、今は言葉の一つひとつ、相手の話を聞く姿勢が、関係性を左右します。

「自分の話にすり替える」という行動。これは単なる会話の癖ではありません。その背景には、承認欲求、不安、親密になりたいという願望、あるいは長年培われた生活習慣など、様々な心理が隠れています。

70代の女性から、こんな話を聞きました。夫を5年前に亡くし、最近カルチャーセンターの絵画教室で知り合った男性と親しくなったそうです。彼は元会社の部長で、とても紳士的。でも会話をしていると、いつも彼の昔話になってしまう。「部長時代はね」「私の若い頃は」。最初は「人生経験が豊富な方なのね」と思っていたけれど、だんだん「私の話も聞いてほしい」という気持ちが強くなってきたと言います。

承認されたい気持ちは、何歳になっても変わらない

「自分の話にすり替える」人の心理を理解するために、まず認めたいことがあります。それは、何歳になっても人は「認められたい」「理解されたい」という気持ちを持っているということです。

若い頃は仕事で評価され、子育てで感謝され、社会の中で自分の役割を実感できました。でも定年後、子どもたちが独立した後、その「認められる場」が減っていきます。特に男性は、会社という組織から離れたときに、急に自分の存在意義を見失いがちです。

そんなとき、会話の中で自分の話をすることは、「自分はまだ価値のある人間なんだ」と確認する行為になります。「私も昔はこんなことをした」「私にもこんな経験がある」と語ることで、自分の存在を主張しているんですね。

これは決して悪いことではありません。人生の先輩として、若い世代に経験を伝えることは大切です。でも、同世代や恋愛の相手との会話では、少し注意が必要かもしれません。

自己中心的?いいえ、不安なんです

ここで少し意外な話をしましょう。「自分の話にすり替える」人は、一見すると自己中心的に見えます。でも実は、その多くが不安を抱えているんです。

会話の沈黙が怖い。相手に嫌われたくない。何を話していいかわからない。そんな不安から、つい知っている話題、つまり自分の経験談に逃げ込んでしまう。特にシニアの恋愛では、この傾向が強く出ます。

60代の男性の話です。妻と離婚して一人暮らしを始め、友人の紹介で素敵な女性と出会いました。デートを重ねる中で、彼は気づいたそうです。自分がいつも自分の話ばかりしていることに。

「なぜだろうと考えたら、怖かったんです。沈黙が怖い、彼女に退屈だと思われたくない。だから必死に話をつないでいた。気づいたら全部自分の話になっていました」

彼女は優しい人で、ある日そっと言ってくれたそうです。「あなたの昔話も面白いけれど、私の話も聞いてもらえたら嬉しいわ」と。その一言で、彼ははっとしました。自分が不安から相手を思いやることを忘れていたことに。

親密になる方法を、間違えていませんか

「自分の話をすれば距離が縮まる」。そう思い込んでいる方、意外と多いんです。確かに自己開示は親密さを生みます。でも、一方的な自己開示は、時に相手を遠ざけてしまいます。

特にシニアの恋愛では、お互いに長い人生を歩んできています。語りたい思い出も、伝えたい経験も山ほどある。だからこそ、聞く側に回ることの大切さを忘れがちです。

ある女性は、趣味の山歩きサークルで知り合った男性と親しくなりました。最初のうち、彼は自分の登山経験を延々と語り、彼女の話を聞こうとしませんでした。「この人は私に興味がないのかしら」と思い始めたとき、彼が体調を崩して山に行けなくなったんです。

お見舞いに行った彼女に、彼は弱々しく言いました。「君のこと、ほとんど知らないね。ごめん、俺ばかり話して」。その言葉をきっかけに、二人の関係は変わりました。彼は聞き役に徹し、彼女の人生を丁寧に聞いていきました。すると不思議なことに、彼女も彼の話をもっと聞きたくなったそうです。

親密さは、話すことよりも聞くことから生まれる。これは、シニアの恋愛における大切な真理かもしれません。

日本的な「聞く美徳」と向き合う

ここで文化的な背景について考えてみましょう。日本では昔から「聞き上手」が美徳とされてきました。特に女性は、男性の話を黙って聞くのが良い妻、良い女性だと教えられた世代も多いでしょう。

でも時代は変わりました。今のシニア女性は、自分の意見を持ち、自分の人生を語る権利があることを知っています。だからこそ、パートナーが自分の話ばかりすることに、以前より敏感になっているんです。

75歳の女性が言っていました。「若い頃は、夫の話を黙って聞くのが当たり前だと思っていました。でも夫が定年してから、毎日毎日同じ昔話を聞かされて、私の話は一度も聞いてくれない。50年も一緒にいるのに、夫は私のことを何も知らないんだと気づいて、悲しくなりました」

彼女は思い切って夫に言いました。「私の話も聞いてほしい」と。最初は驚いていた夫も、徐々に聞き役に回るようになり、今では「お前にこんな一面があったのか」と新鮮な気持ちで妻を見つめ直しているそうです。

脳が喜ぶ、自分語りの快感

少し科学的な話をしましょう。人が自分の話をするとき、脳内ではドーパミンという快感物質が分泌されます。これは、美味しいものを食べたり、好きな音楽を聴いたりするときと同じ反応です。

つまり、自分の話をすることは、脳にとって気持ちいいことなんです。だから「すり替え癖」がなかなか直らない。特に年齢を重ねると、新しい経験よりも過去の思い出を語ることが増えますから、この傾向はさらに強まります。

でも、ここで考えたいのは、相手の話を聞くことも、実は脳に良い影響があるということです。他者の経験を聞くことで、共感する力が鍛えられ、脳の様々な部分が活性化します。認知症予防の観点からも、人の話をじっくり聞くことは推奨されているんですよ。

良い面もある、自分の話

ここまで、自分の話にすり替える問題点ばかり話してきましたが、実は良い面もあります。自分の経験を語ることで、相手との共通点が見つかることがあるんです。

ある夫婦の話です。結婚45年目、お互いに「もう相手のことは全部知っている」と思っていました。でもある日、妻が若い頃の恋愛話をしたとき、夫が「実は俺もそういう経験がある」と自分の話にすり替えました。

普段なら「また自分の話」と思う妻でしたが、その日は違いました。夫の語る若き日の恋愛は、妻の知らない一面を見せてくれました。「あなたにもそんな時代があったのね」と妻は新鮮な気持ちで夫を見つめました。

自分の話にすり替えることが、必ずしも悪いわけではない。大切なのは、タイミングとバランスなんですね。

ギャップが生む、新しい魅力

普段は聞き上手な人が、たまに自分の話にすり替えると、「意外に自己主張がある」と好印象になることもあります。これは、シニアの恋愛でも同じです。

いつも控えめで、相手の話をじっくり聞いていた男性が、ある日自分の戦争体験や若い頃の夢について熱く語り出した。女性は「この人にもこんな情熱的な一面があるのね」と、改めて惹かれたそうです。

あるいは、いつも家庭的な話題しかしない女性が、実は若い頃キャリアウーマンとして活躍していた話をしたとき、男性は「もっとこの人のことを知りたい」と思ったという話も聞きます。

自分の話をすることは、自分という人間の多面性を見せる機会にもなります。ただし、それが一方的にならないよう、気をつける必要があります。

初めての出会いと、長年の関係

自分の話にすり替える影響は、関係の段階によって変わります。初めて会った相手との会話で自分の話ばかりだと、「この人は私に興味がないんだ」と思われて、関係は発展しません。

でも長年連れ添った夫婦や、付き合いの長い友人なら、「まあ、いつものことね」と受け入れられることもあります。それは相手の性格や癖を理解しているからです。

ただし、注意したいのは「慣れ」です。「いつものこと」だからと放置していると、不満は少しずつ溜まっていきます。特に定年後、一日中顔を合わせるようになった夫婦では、この小さな不満が大きな問題に発展することがあります。

実際、熟年離婚の理由として「夫が自分の話ばかりで、私の話を聞いてくれない」というものは珍しくありません。40年、50年と我慢してきたことが、子どもが独立し、夫が定年したとき、一気に噴き出すんです。

SNS時代のシニアと、自分語り

ここで少し現代的な話題を。最近、シニア世代でもスマートフォンやSNSを使う方が増えています。FacebookやInstagramに日々の写真や思い出を投稿する。これ自体は素晴らしいことです。

でも、SNSでの「自分語り」に慣れると、リアルな会話でも同じようにしてしまうことがあります。SNSでは自分の話を一方的に発信するのが普通ですが、対面の会話では相手とのキャッチボールが必要です。

この違いを理解せずに、リアルな会話でもSNSのように自分の話を一方的にしてしまう。特に新しく出会った異性との会話では、これが致命的になることがあります。

具体的な体験から学ぶこと

ここで、いくつかの具体的な体験談をご紹介しましょう。

68歳の女性は、配偶者を亡くして3年後、友人の紹介で同年代の男性と食事に行きました。彼は紳士的で、最初は好印象でした。でも、彼女が「最近孫が生まれて」と話し始めると、すぐに「私の孫はね」と自分の話にすり替えられました。

「仕事を辞めてから趣味で」と言えば「私も退職後は」と自分の話に。彼女は次第に「この人は私の話を聞く気がないんだ」と感じ、二度目のデートは断りました。後から友人に「彼はきっと緊張していただけよ」と言われましたが、第一印象は変わりませんでした。

一方、別の体験談もあります。72歳の男性は、カルチャーセンターで知り合った女性と親しくなりました。彼女が戦後の苦労話をしたとき、彼も「私も同じような経験がある」と自分の話をしました。すると女性は「まあ、あなたも大変だったのね」と共感してくれました。

お互いの苦労話を語り合ううちに、二人には深い絆が生まれました。これは、自分の話にすり替えることが、むしろ共通点を見つけるきっかけになった例です。

また、結婚50年の夫婦の話も印象的でした。妻が「最近膝が痛くて」と相談すると、夫はすぐ「俺も腰が痛い」と自分の話にすり替えます。若い頃なら妻は怒っていたでしょう。でも今は「この人も年を取って、不安なのね」と理解しています。

夫婦二人で老いていく過程で、お互いの不安を語り合う。それが自分の話にすり替える形でも、二人にとっては大切なコミュニケーションになっているんです。

上手な付き合い方を見つける

では、自分の話にすり替える人と、どう付き合えばいいのでしょうか。

まず、相手がなぜそうするのかを理解することです。承認欲求、不安、親密になりたいという願望。その背景を理解すれば、イライラも少し和らぎます。

そして、優しく伝えることです。「あなたの話も面白いけれど、私の話も聞いてほしいの」と。年齢を重ねた者同士、もう遠回しな表現は必要ありません。率直に、でも優しく伝えましょう。

また、自分自身も振り返ってみることです。もしかしたら、あなた自身も気づかないうちに、相手の話を自分の話にすり替えているかもしれません。お互い様だと気づけば、相手への寛容さも生まれます。

人生の終盤だからこそ、丁寧に

人生の後半戦。これからの時間は、若い頃よりも貴重です。だからこそ、一緒に過ごす相手との会話を大切にしたい。相手の話をじっくり聞き、自分の思いも丁寧に伝える。

自分の話にすり替えることが全て悪いわけではありません。でも、それが一方通行にならないよう、バランスを取ることが大切です。

70代、80代になっても、人は成長できます。新しいコミュニケーションの形を学ぶことができます。「今さら変われない」と諦めるのではなく、「今からでも、もっと良い関係を築ける」と前向きに考えましょう。

温かい関係を築くために

最後に、心温まる話を一つ。80代の夫婦がいました。夫は若い頃から自分の話ばかりする人でした。妻は60年近く、それに耐えてきました。

でもある日、妻が入院したんです。夫は毎日お見舞いに来て、初めて妻の話をじっくり聞きました。妻の子ども時代の話、結婚前に抱いていた夢、子育ての苦労。60年間、一度も聞いたことのない話ばかりでした。

夫は涙を流して言いました。「お前のこと、何も知らなかった。こんなに素敵な人生を歩んできたのに、俺は一度も聞こうとしなかった」

妻は優しく微笑んで答えました。「今、聞いてくれているじゃない。それで十分よ」

退院後、夫婦の会話は変わりました。夫は妻の話を聞くようになり、妻も夫の昔話を新鮮な気持ちで聞くようになりました。「60年目にして、やっと本当の夫婦になれた気がする」と、二人は笑い合ったそうです。