お盆やお正月に帰省してきた娘さんや息子さん、あるいはお孫さんと久しぶりに会ったとき、「彼氏がね」「彼女がね」という話が延々と続いて、少し疲れてしまった経験はありませんか。嬉しい気持ちと複雑な気持ちが入り混じって、どう反応していいか分からなくなることもあるかもしれません。
パートナーの話ばかりする人というのは、年代を問わず存在します。若い世代だけでなく、シニア世代の友人や知人の中にも、夫や妻、あるいは新しいパートナーの話ばかりする方がいらっしゃるでしょう。今回は、パートナーの話ばかりする人の心理を理解しながら、上手に付き合っていく方法についてお話ししていきたいと思います。
まず、なぜ人はパートナーの話ばかりしてしまうのでしょうか。その心理的な背景にはいくつかの理由があります。
一つ目は、純粋な幸せの共有です。好きな人ができたとき、その喜びを誰かに伝えたくなるのは自然な感情です。特に、長い間一人だった人が新しいパートナーを見つけたときや、若い人が初めての恋愛をしているときは、その高揚感から話が止まらなくなることがあります。
二つ目は、自分の選択や存在を認めてもらいたいという気持ちです。「こんな素敵な人と付き合っている私」を見てほしい、認めてほしいという欲求が隠れていることがあります。これは決して悪いことではありませんが、度が過ぎると周囲の人を疲れさせてしまうことがあります。
三つ目は、パートナーのことで頭がいっぱいになっているという状態です。恋愛の初期段階や、関係が深まっている時期には、相手のことばかり考えてしまうものです。そうなると、自然と話題もパートナーのことが中心になっていきます。
四つ目は、他に共有できる話題が少ないという場合です。特に生活環境が変わった人や、新しい趣味を持っていない人は、一番身近にいるパートナーの話が自然と多くなりがちです。
こうした心理を理解した上で、具体的な体験談を見ていきましょう。
七十代の女性から聞いた話です。彼女には三十代の娘さんがいるのですが、その娘さんが結婚してから、会うたびにご主人の話ばかりするようになったそうです。
「娘の幸せが一番だから、嬉しいのよ。でもね、会うたびに旦那さんの話ばかりで、私の話を聞いてくれる余裕がないの」と彼女は少し寂しそうに話してくれました。「孫の話ならまだしも、旦那さんがどうしたこうしたという話を延々と聞かされると、正直疲れてしまって」。
彼女は最初、娘さんの幸せを喜んで聞いていました。でも、何度会っても同じような話が続くと、だんだんと会うのが億劫になってきたそうです。「娘に会いたいのに、会うと疲れる。この矛盾した気持ちが辛くて」と彼女は複雑な表情を浮かべていました。
この話を聞いて、私は多くのシニアの方が同じような経験をしているのではないかと思いました。子どもや孫の幸せは何より嬉しいこと。でも、だからといって一方的に話を聞かされるのは、やはり疲れてしまうものです。
ここで一つ、面白い話をご紹介しましょう。ある地域の老人会での出来事です。会員の一人である八十代の男性が、毎回の集まりで奥様の話ばかりしていたそうです。奥様がいかに料理上手か、いかに優しいか、いかに自分を支えてくれているか。
最初のうちは皆さん微笑ましく聞いていましたが、何ヶ月も続くとさすがに「また始まった」という空気が流れるようになりました。ある日、仲の良い会員が冗談めかして「奥さんの話より、あなた自身の話を聞きたいよ」と言ったそうです。
するとその男性、照れながらも「実は女房の話しかできないんだ。若い頃から仕事一筋で、趣味もない。唯一誇れるのが女房だから」と打ち明けたとのこと。その言葉を聞いて、周りの人たちは少し反省したそうです。パートナーの話ばかりする背景には、そういう事情もあるのだと。
それからその男性は、皆に勧められて囲碁を始めました。今では囲碁の話もするようになり、話題のバランスが取れるようになったそうです。そして奥様の話をするときも、「また女房の話で悪いんだけど」と前置きするようになったとか。ちょっとした気遣いで、周囲との関係が良くなったという微笑ましい話です。
さて、パートナーの話ばかりする人にどう対処すればいいか、いくつかの方法をお話ししましょう。
まず、相手の気持ちを受け止めることです。パートナーの話をしたがる人は、その幸せを誰かに分かってもらいたいと思っています。最初から「また始まった」と思って聞くのではなく、まずは相手の幸せを一緒に喜んであげましょう。その上で、適度なところで話題を変えていくのです。
具体的には、相手の話を聞いた後に「それは良かったわね」と一度受け止めてから、「ところで最近、あなた自身はどう?仕事は順調?」というように、パートナー以外の話題に誘導してみましょう。
次に、自分から話題を提供することです。相手がパートナーの話ばかりするのは、他に話題がないからかもしれません。そんなときは、こちらから新しい話題を振ってみましょう。最近見たテレビ番組、読んだ本、気になるニュース、季節の行事など、話のきっかけはたくさんあります。
また、正直に気持ちを伝えることも大切です。ただし、伝え方には工夫が必要です。「あなたの話ばかりで疲れる」と直接言うのではなく、「私もね、最近こんなことがあって」と自分の話を挟むことで、会話のバランスを取っていくのです。
それでも改善されない場合は、少し距離を置くことも一つの方法です。毎週会っていたのを月に一度にする、電話の時間を短くするなど、自分の心を守るための調整は必要です。
六十代後半の女性から、こんな体験談を聞きました。彼女には同年代の親友がいて、長年にわたって月に一度はランチを共にしていました。ところが、親友が数年前に再婚してから、会うたびにご主人の話ばかりするようになったそうです。
「最初は本当に嬉しかったの。長い間一人だった彼女がまた幸せになれて。でも、会うたびにご主人の話ばかりで、私の話を聞いてくれる余裕がなくなってしまって」と彼女は振り返ります。
彼女は悩んだ末、親友に正直に気持ちを伝えることにしました。「あなたが幸せなのは本当に嬉しい。でも、私も自分の話を聞いてほしいの」と。
親友は最初、驚いた顔をしたそうです。でもすぐに「ごめんなさい、気づかなかった」と謝ってくれました。それからは、会話のバランスを意識するようになり、二人の関係はさらに深まったとのことです。
「言うのは勇気がいったけれど、言って良かった。黙っていたら、きっと関係が壊れていたと思う」と彼女は話してくれました。
この体験談から分かるのは、大切な関係を守るためには、時には正直に気持ちを伝える勇気が必要だということです。もちろん、言い方やタイミングは大切です。でも、黙って我慢し続けることが、必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。
ところで、自分自身がパートナーの話ばかりしていないか、振り返ってみることも大切です。シニア世代であっても、長年連れ添った配偶者や、新しくできたパートナーの話が自然と多くなることがあります。
もし心当たりがあるなら、意識的に話題のバランスを取るようにしてみてください。パートナーの話をした後は、相手の話を聞く時間を作る。自分の趣味や最近の出来事、気になる話題など、パートナー以外のことも話すようにする。そうすることで、会話がより豊かになり、相手との関係も良好に保てるはずです。
また、パートナーの話をするときも、一方的な報告や自慢にならないよう気をつけましょう。「こんなことがあって嬉しかった」「こんなことで困っている」というように、自分の感情を交えて話すと、相手も共感しやすくなります。
さて、ここでシニア世代ならではの視点から、この問題を考えてみたいと思います。
人生の後半になると、人間関係はより大切になってきます。子どもたちは独立し、仕事での人間関係もなくなり、友人の中には先立つ人も出てきます。そんな中で、長年の友人や家族との関係は、心の支えになるかけがえのないものです。
だからこそ、パートナーの話ばかりされて疲れるという小さな不満が、大切な関係を壊してしまうのは本当にもったいないことです。かといって、我慢し続けて自分が疲弊してしまうのも良くありません。
大切なのは、お互いを思いやりながら、正直に気持ちを伝え合える関係を築くことではないでしょうか。
七十代の男性がこんなことを言っていました。「この歳になると、友達は増やそうと思っても簡単には増えない。だから、今いる友達を大切にしないといけない。多少のことは目をつぶる。でも、本当に嫌なことは、ちゃんと言う。それが長く付き合っていく秘訣だと思う」。
この言葉に、私は深く共感しました。人間関係は、完璧を求めるものではありません。お互いの欠点を認め合い、時には指摘し合い、それでも一緒にいたいと思える関係こそが、本当の友情であり、家族の絆なのかもしれません。
パートナーの話ばかりする人がいたら、まずはその人の幸せを喜んでください。そして、自分の気持ちも大切にしてください。そのバランスを取ることが、良好な人間関係を続けていく秘訣です。
孫や子どもがパートナーの話ばかりするときも同じです。彼らの幸せを喜びながら、でも自分も話を聞いてほしいという気持ちは正直に伝えていい。「おばあちゃんも最近ね」「お母さんはこう思うのよ」と、自分の存在をさりげなく主張することで、会話のバランスが取れていきます。