パートナーとの関係で少し息苦しさを感じていませんか。退職してから家にいる時間が増えて、以前より相手が何かと口を出してくるようになった。あるいは、長年連れ添ってきたのに、いつも相手のペースで物事が決まってしまい、自分の意見が通らない。そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
私も60代になり、夫が定年退職してから、夫婦の関係が大きく変わったことを実感しています。それまでは仕事で忙しかった夫が、毎日家にいるようになって、急に家のことにあれこれ口を出すようになりました。「この掃除の仕方は効率が悪い」「買い物はこの店の方が安い」「夕飯のメニューはもっと栄養バランスを考えろ」と、まるで上司のように指示されて、正直、参ってしまったこともあります。
でも、試行錯誤を重ねる中で、お互いに心地よく過ごせる方法を見つけることができました。今日は、そんな経験を踏まえて、シニア世代の私たちが「仕切りたがる人」とどう向き合っていけばいいのか、お話ししたいと思います。
なぜ退職後に「仕切りたがる人」が増えるのか
長年、会社で働いてきた方、特に管理職だった方は、退職後も「指示する」「管理する」というモードから抜け出せないことがあります。職場では部下を指導し、プロジェクトを仕切り、それが当たり前だったわけですから、無理もないことです。
でも、家庭は職場ではありません。パートナーは部下ではないし、家事や日常生活に「正解」や「効率」だけを求めても、うまくいかないことの方が多いのです。
また、退職によって「居場所」を失ったと感じる人もいます。これまで会社という明確な立場があったのに、それがなくなると、家庭で自分の存在価値を示そうとして、必要以上に口を出してしまうこともあるのです。
一方、長年家庭を守ってきた方の中にも、「私がこの家のことは一番わかっている」という思いから、パートナーのやり方を認められない人もいます。「あなたのやり方は違う」「私のやり方に従ってほしい」と、つい強く出てしまうのです。
仕切りたがる人の心理を理解する
仕切りたがる人は、一見すると頼りになり、リーダーシップがあるように見えます。でも、その背景には不安や孤独があることも少なくありません。
「自分がしっかりしなければ」という責任感。「相手に任せたら失敗するかもしれない」という心配。「自分の意見が通らないと、自分の存在価値がない」という焦り。そんな気持ちが、過剰な干渉や管理につながっているのかもしれません。
だから、頭ごなしに「うるさい」「放っておいて」と突き放すのではなく、相手の気持ちを理解しながら、上手に距離を取ることが大切です。
実際に私が経験したこと
私の夫は、定年退職してから急に家のことに口を出すようになりました。特に買い物については、「この商品は高い」「あっちのスーパーの方が安い」と、細かくチェックするようになったんです。
ある日、私がいつも買っている豆腐を手に取ったら、「それ、隣のより20円高いじゃないか」と言われました。私は40年近くこの家の家計を守ってきて、どの商品を選ぶべきか、自分なりの基準を持っています。この豆腐は少し高いけれど、味が良くて、私たち二人の好みに合っているから選んでいるのです。
でも、夫にそれを説明しても、「20円の差は大きい。年間で考えたら7300円も違う」と計算し始める始末。私は悲しくなって、「じゃあ、あなたが買い物してください」と言ってしまいました。
夫は驚いた顔をして、「そんなつもりじゃなかった。ただ、節約できるところは節約した方がいいと思って」と言いました。その時、私は気づいたんです。夫は悪気があって言っているのではなく、「家計に貢献したい」という気持ちから言っていたんだと。
それからは、私も少し考え方を変えました。夫の意見を全面的に否定するのではなく、「その意見は参考にするわ。でも、この豆腐は私たち二人とも好きだから、これは続けさせてね」と伝えるようにしたんです。そして、「節約したいなら、週に一度、一緒にチラシを見て、特売品をチェックする日を作らない?」と提案しました。
夫はその提案を喜んで受け入れてくれました。今では、週末の朝、二人でチラシを広げて、「今週はこの店が卵が安い」「じゃあ、そこに行こう」と相談しながら買い物リストを作るのが、ちょっとした楽しみになっています。
小さなことから自己主張を始める
いきなり大きな問題で対立するのは、お互いに疲れてしまいます。だから、まずは小さなことから、自分の意見を伝えることから始めましょう。
例えば、テレビのチャンネル選びでもいいんです。「今日はこの番組を見たいの。一緒に見てくれない?」と言ってみる。夕飯のメニューでもいい。「今日は私が食べたいものを作らせてね」と宣言してみる。
最初は相手が不満そうな顔をするかもしれません。でも、小さなことで自分の意見を通す経験を積み重ねることで、「あなたの意見も大切にしているけれど、私の意見も尊重してほしい」というメッセージが伝わっていきます。
「私はこう感じる」という伝え方の大切さ
私たちシニア世代は、長年の経験から、つい「あなたは間違っている」「あなたのやり方はダメだ」と相手を責める言い方をしてしまいがちです。でも、それでは相手も防御態勢に入ってしまい、話し合いにならないんですよね。
だから、「私はこう感じる」という伝え方を心がけましょう。
悪い例は、「あなたはいつも勝手に決めて、私の意見なんて聞かないじゃない」と相手を責める言い方です。
良い例は、「あなたが色々考えて決めてくれるのは助かるのよ。でもね、時々、自分の意見を言う機会がなくて、少し寂しくなることがあるの」と自分の気持ちを伝える言い方です。
この違いは大きいです。前者は相手を攻撃しているので、相手は反論したくなります。でも後者は、自分の正直な気持ちを伝えているだけなので、相手も「そうだったのか。気づかなくてごめん」と受け止めやすくなります。
役割を分担して、お互いの領域を尊重する
退職後の生活で大切なのは、「全部あなたが決めて」でも「全部私が決めて」でもなく、役割を分担することです。
例えば、私たち夫婦の場合、家計の管理は私、大きな買い物の決定は夫と相談、日々の献立は私、旅行の計画は夫と、自然と役割分担ができました。
ある友人夫婦は、「月曜日から金曜日の夕飯は奥さんが決める、週末は旦那さんが決める」というルールを作ったそうです。最初は旦那さんが「毎週末メニューを考えるのは大変だ」と言っていたそうですが、今では「今週末は何を作ろうか」と楽しそうに料理本を見ているそうです。
こうやって役割を分担することで、お互いの領域を尊重し合えるようになります。
ユーモアを交えて、上手に受け流す
深刻に捉えすぎず、時にはユーモアで受け流すことも大切です。私たちシニア世代は、長年連れ添ってきた分、相手のツボもわかっていますよね。
私の友人の奥さんは、旦那さんが家事に細かく口を出すようになった時、「はいはい、今日も監督モードね。私は現場監督に怒られないように頑張りますよ」と笑って言ったそうです。旦那さんも苦笑いして、「そんなに偉そうにしてたかな」と反省したそうです。
こんな風に、軽いジョークで牽制する方法も、長年の信頼関係があるからこそできることですよね。
余談ですが、面白いエピソード
ここで少し話が逸れますが、私の知り合いの夫婦に、こんな面白いエピソードがあります。
旦那さんは定年退職後、急に料理に目覚めて、毎日キッチンに立つようになったそうです。最初は奥さんも「助かるわ」と喜んでいたのですが、旦那さんが使った調理器具を洗わずに置きっぱなしにするので、結局奥さんが片付けることになり、「これなら自分で作った方が楽だ」と思うようになってしまいました。
ある日、奥さんが「料理は助かるけど、後片付けもセットでお願いできない?」と頼んだら、旦那さんは「えっ、料理と後片付けって別の作業だろ?」と真顔で言ったそうです。奥さんは「40年間、私が作った料理の後片付けは誰がやってたと思ってるの!」と大笑いしながらツッコんだそうです。
今では、旦那さんも料理と後片付けをセットでやるようになり、「料理って、作るより片付ける方が大変なんだな」と実感しているそうです。何事も、やってみないとわからないものですね。
旅行計画で全てを仕切られた時の対処法
私の知人の夫婦は、旦那さんが旅行の計画を立てるのが大好きで、スケジュールから宿、食事場所まで全て完璧に決めるタイプでした。奥さんは最初は「助かるわ」と喜んでいたのですが、次第に「この美術館には30分しかいられないの?」「次のバスに乗り遅れる!」と急かされるばかりで、全然楽しめなくなってしまったそうです。
ある時、奥さんは勇気を出して、こう伝えたそうです。
「あなたが作ってくれる計画は本当に完璧で助かるのよ。でもね、今回の旅行では、一日だけ、私が行きたい場所を自由に散策する日を作ってくれない?その日だけはあなたも私に任せて、一緒に冒険してほしいの」
旦那さんは少し不満そうでしたが、承諾してくれました。結果、その日は道に迷ったり、予想外の素敵な喫茶店を見つけたりして、二人で大笑いしながら過ごせたそうです。それをきっかけに、「たまには計画にない発見も面白いね」と旦那さんの考え方が少しずつ柔軟になっていったそうです。
私たちシニア世代は、効率や計画を重視しがちですが、時には予定のない「ゆとり」も大切なんですよね。
服装や身だしなみに口を出される時の対処法
私の男性の友人は、奥さんが自分の服装によく口を出すことに悩んでいました。「その組み合わせはおかしい」「こっちのシャツの方がいい」と、ほぼ毎日のように指摘され、自分の好みで服を選ぶことさえできなくなってしまったそうです。
60代、70代になっても、自分のスタイルは持っていたいものですよね。
ある日、友人は冗談っぽく、でも本音を込めて伝えたそうです。
「君のファッションセンスは本当にいいと思うし、頼りにしているよ。でもね、たまには僕の選んだ服も見てほしいんだ。だって、それも僕なんだよね。今日くらいは、君にダメ出しされる覚悟で、僕が選んだ服を着ていこうと思うんだ」
奥さんはその言葉に少し驚いたようでしたが、「ごめんなさい。言いすぎてたわね」と謝ってくれたそうです。それ以降、口出しする回数は減り、たまに「それ、なかなか面白いセンスね」と認めてくれることも出てきたそうです。
友人関係や趣味の時間を管理される時の対処法
退職後、趣味の時間や友人との交流が増える方も多いと思います。でも、パートナーが「誰と」「どこで」「何をして」遊ぶのか、細かく把握したがることもあります。
私の知人の女性は、旦那さんから「そんな時間に出かけるのは危ない」「あの人とは遊ばない方がいい」と言われて、管理されているようで息苦しかったそうです。
彼女は、旦那さんの心配性な部分を認めつつ、自分の領域は守るように伝えました。
「あなたが心配してくれるのは、ありがたいし、私のことを思ってくれているのはわかるのよ。でも、最終的に誰と付き合うかは、私が決めることだと思うの。あなたの意見は参考にさせてもらうから、それで見守っていてくれない?」
これは少し衝突を生んだそうですが、彼女は自分の交友関係を貫きました。それを繰り返すうちに、旦那さんも「妻は自分の判断を持っている」と理解し、少しずつ干渉が減っていったそうです。
シニア世代だからこそ、それぞれの時間と空間を大切にすることも必要なんですよね。
それでも改善されない場合は、真剣に話し合う
上記の方法を試しても相手の態度が変わらず、関係性にひびが入るようなら、きちんと話し合う時です。
長年連れ添ってきた夫婦だからこそ、「今さら変わらないだろう」とあきらめてしまうこともあります。でも、これからの人生はまだまだ長いのです。お互いに心地よく過ごせる関係を作るために、勇気を出して本音を伝えることも大切です。
伝え方の例としては、こんな感じです。
「あなたのことを信頼しているし、頼りにしている気持ちは本当よ。でも、全てを決められてしまうと、だんだん自分がなくなっていくような、息苦しさを感じる時があるの。これからの人生、もっと二人で決めていく関係になれないかしら?」
この時、相手を責めるのではなく、「これからも一緒に幸せに暮らしたい」という前向きな気持ちを伝えることが大切です。
シニア世代の恋愛、パートナーシップの形
若い頃の恋愛と、シニア世代のパートナーシップは、形が違って当然です。
若い頃は、相手に夢中で、相手のためなら何でもできると思っていました。でも、年齢を重ねると、自分のペースや価値観も大切にしたくなります。それは決してわがままなことではなく、自然なことです。
大切なのは、お互いの違いを認め合い、尊重し合うこと。そして、長年連れ添ってきた信頼関係を土台に、これからの人生をどう一緒に歩んでいくか、話し合いながら進んでいくことです。
「仕切りたがる人」も、実は不安や孤独を抱えているのかもしれません。だから、頭ごなしに否定するのではなく、相手の気持ちを理解しながら、自分の気持ちも伝えていく。そんなコミュニケーションが、これからの夫婦関係をより豊かにしてくれるはずです。