娘さんや息子さんから「お父さん、お母さんも、そろそろマッチングアプリ始めてみたら?」なんて言われたことはありませんか。定年を迎えて時間ができた、パートナーとの別れを経験した、あるいは長年一人で過ごしてきたけれど、もう一度誰かと温かい時間を共有したい。そんな気持ちが芽生えてきたとき、マッチングアプリという選択肢が頭をよぎるかもしれません。
でも、いざ始めようとすると、たくさんの不安が押し寄せてきます。「写真を載せるなんて恥ずかしい」「若い人たちばかりじゃないの」「顔を出すのは抵抗がある」。そして、特にこのコロナ禍を経験した私たちにとって身近になったマスク。「マスクをした写真なら、少しハードルが下がるかも」と考える方も多いのではないでしょうか。
今日は、シニア世代の皆さんに向けて、マッチングアプリでマスク写真を使うことについて、じっくりお話しさせていただきます。若い人向けのアドバイスとは少し違う、私たち世代ならではの視点も交えながら。
まず、正直に申し上げますね。マスク写真だけでプロフィールを作ることは、できれば避けたほうがよいのです。でも、それには理由があります。そして、賢く使えば、マスク写真も悪くはない。この両方の側面を、ゆっくりと見ていきましょう。
マスク写真のメリット、つまり良い面から考えてみます。一番大きいのは、心理的なハードルが下がるということです。私たちの世代は、インターネット上に自分の顔写真を載せることに、若い世代よりも大きな抵抗を感じます。それは当然のことです。私たちが若い頃は、写真というのは家族のアルバムに大切にしまっておくものでしたから。
だから、「いきなり顔全体を見せるのは恥ずかしい」という気持ち、よくわかります。マスクをしていれば、目元と雰囲気だけで勝負できる。これは確かに、最初の一歩を踏み出すための助けになります。
また、マスクをしていると、ある種のミステリアスな印象を与えることもあります。「どんな方なんだろう」という好奇心を相手に持ってもらえる。これがメッセージのきっかけになることもあるんです。特に、目元が魅力的な方にとっては、マスクが「引き立て役」になることもあります。昔から「目は口ほどに物を言う」と言いますよね。優しい目元、笑っている目元は、マスクをしていても十分に伝わるものです。
それから、職業柄の理由もあります。医療関係や介護のお仕事をされている方、あるいは接客業の方など、お仕事中にマスクをつけることが多い場合、「これが私の日常です」という意味で、マスク姿の写真を載せるのは自然なことです。むしろ、正直に日常を見せているという誠実さを感じてもらえるかもしれません。
ここで、少し横道にそれますが、面白い話をさせてください。70代の男性が、趣味の陶芸教室でマスクをつけて真剣に作品を作っている写真をプロフィールに載せたところ、「その集中力、素敵ですね」「私も陶芸に興味があります」というメッセージが多く届いたそうです。マスクをしていたことよりも、真剣に何かに取り組む姿勢が、相手の心を動かしたのです。つまり、マスクの有無よりも、あなたが何をしているか、どんな人生を送っているかが大切だということです。
しかし、デメリットもしっかりとお伝えしなければなりません。そして、こちらのほうが実は大きいのです。
一番の問題は、「何か隠しているのではないか」という疑念を持たれてしまうことです。私たちの世代は、人を疑うことをあまり好みません。でも、残念ながら、インターネット上には誠実でない人も存在します。顔を隠している人を見ると、「既婚者なのではないか」「写真詐欺をしているのではないか」「何か後ろめたいことがあるのでは」と警戒されてしまう可能性が高いのです。
60代の女性の体験談があります。彼女は最初、マスクをした写真だけを載せていました。写真を撮られることが苦手で、マスクをしていれば少し楽だったからです。でも、「いいね」がほとんど来ない日々が続きました。不安になって、同じアプリを使っている友人に相談したところ、「それじゃあ、誰も安心して連絡できないわよ」と言われたそうです。
勇気を出して、庭でガーデニングをしている笑顔の写真に変えました。マスクはしていません。すると、急にマッチする数が増えたのです。「あなたの笑顔が素敵」「私もガーデニングが趣味なんです」というメッセージが届くようになりました。彼女は後でこう言っていました。「顔を見せることが怖かったけれど、それは私の思い込みだった。笑顔を見せることで、相手も安心して声をかけてくれるんだと気づいた」と。
マッチングアプリにおいて、笑顔の写真は「誠意の証」なのです。これは若い人も私たち世代も同じです。むしろ、私たちの世代のほうが、誠実さや真面目さを大切にしますよね。だからこそ、顔をしっかり見せることが、相手への敬意にもなるのです。
別の男性の体験談もあります。70代前半の方で、最初はマスクとサングラスをした写真を載せていました。「格好良く見えるかな」と思ったそうです。でも、マッチしても会話がすぐに終わってしまう。「なぜだろう」と悩んでいたとき、ある女性から正直なメッセージが届きました。「申し訳ないけれど、お顔が全く見えないので、会話を続ける気持ちになれないんです」と。
彼はショックを受けましたが、同時に納得もしました。自分だって、相手の顔が全く見えなければ不安になる。当たり前のことでした。そこで、孫と一緒に笑っている写真に変更したところ、同世代の女性からたくさんの反応がありました。「お孫さんと仲良しなんですね」「家族思いの方なんだと伝わってきます」と。結局、彼はその中の一人の女性と、今では定期的に会う仲になったそうです。
期待値の管理という問題もあります。マスクをしていると、相手は想像で顔を補います。そして、実際にマスクを外したときに、「思っていたのと違った」というギャップが生まれやすくなります。最初から顔全体を見せていれば、そういったギャップは生まれません。お互いに、ありのままを受け入れた上で関係が始まるのです。
私たちの世代は、若い頃から「正直であること」「誠実であること」を大切にしてきましたよね。その価値観は、マッチングアプリでも変わりません。むしろ、顔の見えないインターネット上だからこそ、正直さや誠実さが輝くのです。
では、どうすればいいのか。完全にマスク写真を使わないほうがいいのか。そうではありません。賢い使い方があるのです。
基本的な戦略として、メインの写真、つまり一番最初に表示される写真は、笑顔で顔全体がはっきりわかるものにしてください。これが大原則です。正面を向いている必要はありません。少し横を向いていても、自然な笑顔があれば十分です。大切なのは、あなたの温かさや人柄が伝わることです。
そして、2枚目、3枚目の写真として、マスク姿の写真を入れるのは全く問題ありません。ただし、条件があります。それは、「なぜマスクをしているのか」が写真から伝わることです。
例えば、山登りをしている最中の写真。少し息が上がって、でも楽しそうにしている。こういう写真なら、マスクをしていても自然です。「この方は山登りが好きなんだな」「アクティブな方なんだな」という印象を与えます。
冬の雪景色の中で、マフラーとマスクをして、温かそうな服を着ている写真もいいですね。「寒そうだからマスクをしているんだな」と理解してもらえます。むしろ、季節感があって良い写真になります。
あるいは、お仕事の様子。医療や介護、接客のお仕事をされているなら、その誇りを持って見せていいのです。「この方は社会に貢献している素敵な方なんだ」と感じてもらえるでしょう。
キャプション、つまり写真の説明文も大切です。単にマスクをした自撮り写真を載せるのではなく、「春の高尾山、頂上で一息」とか「孫と公園でピクニック中」とか、状況を説明する一言を添えてください。それだけで、写真の印象が全く変わります。
ある女性は、おしゃれが好きで、お気に入りのコーディネートとマスクをした写真を載せていました。ただし、メインの写真はマスクなしの笑顔です。そのマスク写真について、同じようにファッションが好きな男性から「そのマスク、おしゃれですね。どちらで買われたんですか」とメッセージが届いたそうです。そこからファッションの話で盛り上がり、実際に会うことになりました。これは、マスク写真が「会話のきっかけ」として機能した良い例です。
でも、ここで大切なのは、メイン写真がマスクなしだったということです。相手は、顔全体を見て安心し、その上で他の写真にも興味を持ってくれたのです。順番が大切なんですね。
私たちシニア世代にとって、マッチングアプリは新しい挑戦です。最初は不安で当然です。顔写真を載せることに抵抗があるのも、自然な気持ちです。でも、考えてみてください。若い頃、お見合いをしたり、友人に紹介されたりしたとき、顔を隠して会いましたか。きっと、緊張しながらも、笑顔で挨拶をしたはずです。
マッチングアプリも同じです。画面の向こうには、同じように不安を感じながらも、素敵な出会いを求めている人がいます。その人に安心してもらうために、そして誠実な関係を始めるために、顔を見せることが大切なのです。
年齢を重ねた私たちの顔には、人生の物語が刻まれています。喜びも悲しみも、苦労も成功も、すべてが表情の中にあります。それは決して隠すべきものではありません。むしろ、誇るべきものです。シワや白髪を気にする必要はありません。大切なのは、あなたの笑顔、あなたの優しさ、あなたの人生の豊かさが伝わることです。
私の知り合いに、75歳でマッチングアプリを始めた男性がいます。最初は「こんな年で写真を載せるなんて」と躊躇していました。でも、子供たちに「お父さんの笑顔は素敵だよ。自信を持って」と背中を押されて、庭で花の手入れをしている写真を載せました。
すると、同じように園芸が趣味の女性とマッチしました。二人は植物の話で盛り上がり、やがてお互いの庭を見せ合う関係になりました。彼は言います。「顔を隠していたら、この出会いはなかった。ありのままの自分を見せたからこそ、ありのままの相手と出会えた」と。
マスクをした写真を完全に否定するつもりはありません。状況に応じて、補助的に使うことは良いことです。でも、メインの写真、あなたの第一印象を決める大切な写真は、笑顔で顔全体が見えるものにしてください。それが、相手への誠意であり、真剣に出会いを求めているというメッセージになります。
もし写真を撮ることに自信がないなら、家族や友人に頼んでみてください。「マッチングアプリを始めるから、良い写真を撮ってほしい」と。きっと、喜んで協力してくれるはずです。プロに頼む必要はありません。自然な笑顔、あなたらしい瞬間を捉えた写真が一番です。
撮影のコツをいくつか。明るい場所で撮りましょう。暗い写真は、どんなに良い表情でも台無しにしてしまいます。自然光、特に午前中の柔らかい光の中で撮ると、優しい印象になります。背景も大切です。ごちゃごちゃした部屋の中よりも、公園や庭、お気に入りのカフェなど、あなたが好きな場所で撮ると、リラックスした表情になります。
そして、何より大切なのは、本当の笑顔です。作り笑いは見抜かれます。楽しいことを思い出しながら、あるいは撮ってくれている人と楽しく話をしながら撮ると、自然な笑顔になります。目が笑っている写真、これが一番魅力的です。
マッチングアプリは、若い人だけのものではありません。私たちシニア世代も、堂々と使っていい場所です。実際、最近はシニア向けのマッチングアプリも増えています。同世代の方々が、新しい友人を見つけたり、パートナーを見つけたり、あるいは趣味の仲間を見つけたりしています。
人生100年時代と言われる今、60代、70代はまだまだ若いのです。新しいことに挑戦する気持ちを持ち続けること、それが心の若さを保つ秘訣でもあります。マッチングアプリへの挑戦は、新しい人生の扉を開く鍵になるかもしれません。
マスクの話に戻りますが、要するにこういうことです。マスクは便利な道具ですが、人と人との本当のつながりは、顔を見せ合うことから始まります。笑顔を見せること、表情を見せることは、相手への信頼の証です。そして、相手もあなたに同じように笑顔を見せてくれる。その相互の信頼が、良い関係の第一歩なのです。