「マッチングアプリなんて、若い人のものでしょう?」そんな風に思っていらっしゃる方も多いかもしれません。でも、実は今、60代、70代の方々の間でも、スマートフォンを使った新しい出会いの形が静かに広がっているのです。
私の知人で、今年68歳になる女性がいます。彼女は3年前にご主人を亡くされて、しばらくの間は悲しみに暮れていました。でも、ある日「このまま一人でいるのは寂しすぎる」と思い立ち、娘さんに勧められてマッチングアプリを始めたんです。最初は「こんな年になって何をしているんだろう」と恥ずかしさもあったそうですが、今では素敵なパートナーと毎週のように映画を見に行ったり、一緒に料理教室に通ったりと、とても充実した日々を送っています。
「人生100年時代」と言われる現代、60代はまだまだ人生の折り返し地点に過ぎません。健康で活動的な方も多く、新しい恋愛や人生のパートナーとの出会いを求める気持ちは、年齢に関係なく自然なことなのです。
でも、「マッチングアプリって、どんなものなのかしら?」「私たちの年代でも本当に大丈夫なの?」という不安をお持ちの方も多いでしょう。そんな皆さまのために、シニア世代がマッチングアプリを利用する際のポイントや、実際にどんな方々が利用されているのかをお話しさせていただきたいと思います。
まず、シニア世代でマッチングアプリを利用されている方々には、どのような特徴があるのでしょうか。私がこれまでお話を伺った多くの方々に共通しているのは、皆さん「人生に前向き」だということです。
例えば、65歳で定年退職を迎えた男性は、「これまで仕事一筋で生きてきたけれど、これからは違う生き方をしたい」とおっしゃいました。彼の心の中には、新しいことに挑戦したいという気持ちと、一緒にその新しい人生を歩んでくれるパートナーがほしいという想いがありました。「若い頃のような恋愛は求めていないけれど、一緒に笑ったり、お茶を飲んだりできる人がいたら、毎日がもっと楽しくなるのではないか」そんな風に考えて、アプリを始めたそうです。
また、70歳を過ぎて配偶者を亡くされた女性は、「子どもたちには子どもたちの生活があるし、毎日孫の面倒を見てもらうわけにもいかない。でも一人でいると、どうしても寂しくなってしまう」と率直な気持ちを語ってくださいました。彼女が求めていたのは、必ずしも恋愛関係ではなく、「一緒に美術館に行ったり、お茶を飲みながら人生について語り合ったりできる、気の合うお友達」でした。
このように、シニア世代がマッチングアプリを利用する動機は実に様々です。「第二の人生のパートナーを見つけたい」という方もいれば、「趣味を一緒に楽しめる友人がほしい」という方、「おしゃべりを楽しめる相手を探している」という方もいらっしゃいます。
私がお話を伺った中で、特に印象的だったのは、72歳の男性の体験談です。彼は若い頃から鉄道模型が趣味で、退職後はその趣味により多くの時間を費やすようになりました。しかし、同じ趣味を持つ友人も年々少なくなり、一人で模型をいじっているだけでは物足りなさを感じるようになったそうです。
「最初は鉄道模型のサークルを探してみたのですが、なかなか自分の年代の人がいなくて。それで、マッチングアプリのプロフィールに『鉄道模型が趣味です』と書いてみたんです」と彼は笑いながら話してくれました。
すると、なんと同じく鉄道模型が趣味の69歳の女性とマッチングしたのです。「最初は『本当かな?』と疑ったのですが、メッセージのやり取りをしてみると、彼女は私よりも詳しいくらいで驚きました」。実際に会ってみると、彼女は亡くなったご主人の影響で鉄道模型を始め、今では立派なコレクションを持っていることがわかりました。
「一緒に模型店を回ったり、鉄道博物館に行ったりするうちに、自然と親しくなりました。今では、お互いの家を行き来して、模型談義に花を咲かせています」。彼の表情は本当に嬉しそうで、新しい趣味仲間を得た喜びが伝わってきました。
実は、こうした「趣味つながり」の出会いは、シニア世代のマッチングアプリ利用において非常に多いパターンなのです。若い世代と違って、シニア世代の方々は長年培ってきた趣味や興味があり、それを共有できる相手を求める傾向があります。
別の例として、園芸が趣味の74歳の女性の話をご紹介しましょう。彼女は毎日のように庭の手入れをしているのですが、「きれいに咲いた花を見てくれる人がいないのが寂しい」と感じていました。そんな時、マッチングアプリで同じように園芸好きの男性と知り合ったのです。
「最初のデートは、お互いの庭を見せ合うことでした」と彼女は目を輝かせながら話します。「彼のバラの育て方は本当に上手で、私も色々教えてもらいました。今では、一緒に園芸店を回ったり、花の展覧会に行ったりしています」。
このお二人は恋愛関係に発展したわけではありませんが、「人生を豊かにしてくれる、かけがえのない友人」として、今でも良い関係を続けているそうです。
ただし、シニア世代のマッチングアプリ利用には、いくつか注意すべき点もあります。まず、安全面での配慮です。若い世代と比べて、インターネットを使った詐欺などの被害に遭いやすい傾向があるため、十分な注意が必要です。
実際に、75歳の男性が経験した話を聞かせていただいたことがあります。彼は息子さんを早くに亡くされ、お一人で暮らしていました。マッチングアプリで知り合った女性と頻繁にメッセージのやり取りをするうちに、その女性から「急にお金が必要になった」という相談を受けたそうです。
「最初は『息子のような気持ちで助けてあげたい』と思ったのですが、実際に会ったことがない相手にお金を貸すのはおかしいと、近所の方に相談したんです」。幸い、周りの方々の助言もあって、お金を送ることはありませんでしたが、後でその女性のプロフィールが偽物だったことが判明しました。
「アプリ自体は悪いものではないと思うのですが、やはり慎重になる必要があると痛感しました」と彼は語っています。この経験以来、彼は必ず実際に会ってから関係を深めるようにしており、今では信頼できる女性と良いお付き合いをされています。
このような詐欺被害を防ぐためには、以下のような点に注意することが大切です。まず、プロフィール写真があまりにも美しすぎたり、職業が曖昧だったりする場合は注意が必要です。また、実際に会う前に金銭的な援助を求めてくる相手は、ほぼ間違いなく詐欺だと考えて良いでしょう。
安全にマッチングアプリを利用するためには、信頼できる家族や友人に相談することも重要です。私が知っている70代の女性は、娘さんと一緒にアプリを使い始めました。「最初は恥ずかしかったけれど、娘に相談できるので安心」とおっしゃっています。
実際、親子でマッチングアプリについて話し合うご家庭も増えているようです。先ほどの女性の娘さんは、「母が一人でいるのを見ていて心配だったので、むしろ積極的に勧めました」と話しています。「ただし、安全面は心配なので、新しい人と会う時は必ず事前に連絡をもらうようにしています」。
このように、家族のサポートがあると、より安心してアプリを利用できるでしょう。もちろん、ご家族に話すのが難しい場合は、信頼できる友人に相談するのも良い方法です。
さて、シニア世代がマッチングアプリを使う際のコツについても触れておきましょう。まず、プロフィール作りが非常に重要です。若い世代と違って、シニア世代の方々は豊富な人生経験をお持ちです。その経験や趣味、価値観を正直に書くことで、同じような価値観を持つ方との出会いが期待できます。
例えば、「月に一度は美術館に行きます」「朝の散歩が日課です」「料理を作るのが好きです」など、具体的な生活スタイルを書くと良いでしょう。また、「孫と遊ぶのが楽しみです」「ペットの犬と一緒に暮らしています」といった家族構成についても、正直に書いておくことが大切です。
写真選びも重要なポイントです。「もう若くないから」と気後れする必要はありません。自然な笑顔の写真や、趣味を楽しんでいる時の写真を選ぶと、お人柄が伝わりやすくなります。ただし、あまりに古い写真を使うのは避けた方が良いでしょう。実際に会った時にギャップを感じさせてしまう可能性があります。
メッセージのやり取りについても、シニア世代ならではの注意点があります。若い世代のように頻繁にメッセージを送る必要はありません。むしろ、じっくりと時間をかけて、お互いのことを知っていく方が良いでしょう。「おはようございます」「今日は良い天気ですね」といった季節の挨拶から始めて、徐々に趣味や関心事について話していくと自然です。
実際に会う約束をする際も、急ぐ必要はありません。十分にメッセージのやり取りを重ねて、信頼関係を築いてからの方が安全です。初回のお会いは、明るい時間帯に、人の多いカフェや喫茶店などを選ぶと良いでしょう。
ここで、ちょっと微笑ましいエピソードをご紹介しましょう。71歳の男性が、初めてのマッチングアプリでのデートに向かう時のことです。彼は緊張のあまり、待ち合わせ場所を間違えてしまいました。同じ駅の反対側の出口で待っていたのです。
「30分ほどお互いに探し回った末に、やっと合流できました」と彼は苦笑いしながら話します。「でも、そのおかげで『お互い様ですね』と笑い合えて、緊張がほぐれました」。その後、二人は駅周辺を一緒に歩きながらカフェを探し、予定よりもずっと長い時間を一緒に過ごすことになったそうです。「結果的に、とても良いデートになりました」。
このように、完璧を求めすぎず、自然体でいることが、シニア世代のマッチングアプリ成功の秘訣かもしれません。
また、シニア世代特有の配慮すべき点として、健康面の話題があります。この年代になると、多かれ少なかれ健康上の不安を抱えている方が多いでしょう。お相手と親しくなってきたら、お互いの健康状態について正直に話し合うことも大切です。
「持病があるから」「体力に自信がないから」と引け目を感じる必要はありません。同世代の方なら、そうした事情を理解してくれるはずです。むしろ、お互いを思いやり、支え合える関係を築くことができるでしょう。
私が知っている76歳のご夫婦(マッチングアプリで知り合って結婚された)は、お二人とも多少の持病をお持ちですが、「お互いの通院に付き添ったり、薬の飲み忘れを注意し合ったりしている」そうです。「若い頃の恋愛とは違って、お互いを思いやり、支え合うことが愛情表現なんです」とおっしゃっていました。
シニア世代のマッチングアプリ利用において、もう一つ重要なのは「目的の明確化」です。「結婚を前提とした真剣なお付き合い」を求めているのか、「一緒に趣味を楽しめる友人」を探しているのか、「たまに食事を共にできる相手」がほしいのか、自分の気持ちをはっきりさせておくことが大切です。
そして、その目的をプロフィールやメッセージで相手に伝えることも重要です。若い世代と違って、シニア世代の方々は時間が貴重です。お互いの目的が合わない相手と時間を過ごすよりも、価値観や目標が合う方と出会った方が、充実した関係を築けるでしょう。
例えば、「再婚は考えていないけれど、一緒に旅行を楽しめるパートナーがほしい」という67歳の女性は、プロフィールにそのことをはっきりと書いています。「おかげで、同じような考えの男性と知り合うことができました」と彼女は満足そうに話します。
一方、「人生のパートナーとして、一緒に老後を過ごせる人を探している」という69歳の男性は、真剣な交際を求めていることをプロフィールに明記しています。「曖昧にしていると、お互いに時間の無駄になってしまいますから」と彼は説明します。
このように、自分の気持ちや目的を正直に伝えることで、より良いマッチングが期待できるのです。
シニア世代のマッチングアプリ利用で、特に心温まるのは、「人生経験を共有できる喜び」を感じている方が多いことです。若い頃とは違って、お互いに長い人生を歩んできた者同士、共通の思い出や価値観を持っていることが多いのです。
73歳の女性は、アプリで知り合った男性と、昭和の時代の思い出話で盛り上がったそうです。「同じテレビ番組を見て育ち、同じ歌を歌って青春時代を過ごした。そんな共通の記憶があると、初対面でもすぐに親しくなれるんです」。
また、お互いに子育てを終えた者同士、孫の話で盛り上がることも多いようです。「孫の写真を見せ合ったり、子育ての苦労話を分かち合ったり。同世代ならではの楽しさがありますね」と、別の方もおっしゃっていました。
さらに、シニア世代の方々は、物事をゆっくりと進める傾向があります。急いで関係を深めようとせず、じっくりと時間をかけて相手を知っていく。これは、実は理想的な関係構築の方法なのかもしれません。
「若い頃は、見た目や条件ばかり気にしていましたが、今は相手の内面や人柄を重視しています」と71歳の男性は話します。「実際に会ってゆっくり話してみて、『この人とは合うな』『価値観が似ているな』と感じられることが一番大切です」。
このように、シニア世代のマッチングアプリ利用には、若い世代とは異なる魅力や価値があります。豊富な人生経験、時間的な余裕、内面を重視する姿勢。これらは、深く関係を築くための大きな財産と言えるでしょう。
ただし、技術的な面で不安を感じる方も多いかもしれません。「スマートフォンの操作に慣れていない」「写真の撮り方がわからない」といった悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
そんな時は、ご家族や友人、あるいは地域のスマートフォン教室などに相談してみてください。最近では、シニア向けのIT教室も増えており、マッチングアプリの使い方を教えてくれるところもあります。
また、多くのマッチングアプリには、初心者向けのガイドやサポート機能が用意されています。わからないことがあったら、遠慮せずにアプリのサポートセンターに問い合わせてみましょう。
「最初は操作に戸惑いましたが、慣れてしまえば意外と簡単でした」と話すのは、68歳の女性です。「今では、写真を撮ったり、メッセージを送ったりするのが楽しくて仕方ありません」。
シニア世代のマッチングアプリ利用で、もう一つ重要なのは「期待値の調整」です。必ずしも運命の人に出会えるとは限りませんし、すべての出会いがうまくいくわけでもありません。でも、それは若い世代でも同じことです。
大切なのは、「新しい出会いを楽しむ」という気持ちです。たとえ恋愛関係に発展しなくても、新しい友人ができたり、新しい趣味を見つけたり、視野が広がったりすることは十分に価値があります。
「結果的に恋人はできませんでしたが、色々な方とお話しできて、とても楽しい経験でした」と話すのは、75歳の男性です。「普段の生活では出会えない職業の方や、違う地域の方ともお話しできて、世界が広がった気がします」。
このように、マッチングアプリは単なる「恋人探しのツール」ではなく、「人生を豊かにするツール」として活用することができるのです。