朝のデイサービスで、いつもより明るい笑い声が響いています。昨日までぼんやりと窓の外を眺めていた田中さんが、今日は目を輝かせて「次の問題、早く出して!」と催促しています。周りの皆さんも一緒になって考え、答えが分かった時の「あー!そうだった!」という声が部屋中に広がっています。
この変化をもたらしたのは、スタッフが始めた「みんなで脳トレクイズ」でした。たった20分のクイズタイムが、高齢者の皆さんの表情を一変させたのです。
クイズには不思議な力があります。懐かしい記憶を呼び覚まし、考える喜びを思い出させ、そして何より、みんなで一緒に楽しむ一体感を生み出すのです。
私自身、祖母の介護施設を訪問した時、クイズタイムの盛り上がりに驚いた経験があります。普段は静かで控えめな祖母が、昭和の歌手の名前当てクイズでは目を輝かせて次々と答えていく姿に、思わず目頭が熱くなりました。「昔は全部歌えたのよ」と嬉しそうに話す祖母の横顔は、私が子供の頃に見た活き活きとした表情そのものでした。
今回は、そんな高齢者の皆さんと一緒に楽しめる、おすすめのクイズ問題をジャンル別にご紹介します。ご家族との団らんや、介護の現場でぜひ活用してみてください。きっと予想以上の笑顔と会話が生まれることでしょう。
なぜクイズは高齢者に効果的なのか?
クイズを始める前に、なぜクイズが高齢者の方々にとって特に効果的なのかを少し理解しておくと良いでしょう。
まず第一に、クイズは脳を活性化させます。「使わなければ失われる」と言われるように、脳も使わなければ機能が低下してしまいます。クイズに挑戦することで、記憶を引き出したり、考えたり、判断したりといった脳の様々な部分を使うことになります。これは認知症予防にも効果があるとされていますね。
また、クイズは成功体験を生み出します。「分かった!」という小さな成功体験が自信につながり、前向きな気持ちを育みます。特に高齢になると、できないことが増えていく不安と向き合うことが多くなりますが、クイズは「まだまだ知識がある」「考えることができる」という自己肯定感を高めてくれるのです。
さらに、共通の話題で盛り上がることで社交の機会が増えます。答えが分かった喜びを共有したり、一緒に考えたりすることで自然と会話が生まれ、孤独感の解消にもつながります。
最後に見逃せないのが、懐かしい記憶を呼び覚ます効果です。特に昔の出来事や風景、歌などに関するクイズは、懐かしさとともに当時の感情や記憶を呼び起こします。これが高齢者の方々の心を明るくし、生き生きとした表情をもたらすのでしょう。
私の祖父も認知症を患っていましたが、戦後の出来事や懐かしい映画スターのクイズになると急に目が輝き、饒舌に話し始めるのを見て、記憶の不思議さを感じたものです。
では、実際にどんなクイズが喜ばれるのか、具体的に見ていきましょう。
懐かしさがよみがえる!昭和クイズ
高齢者の方々が若かった時代、特に昭和時代に関するクイズは、記憶を呼び覚まし、会話が弾むきっかけになります。答えを知っている喜びだけでなく、その時代にまつわる思い出話へと自然と発展していくのが魅力です。
例えば、こんな問題はどうでしょう?
「昭和30年代に『三種の神器』と呼ばれた家電製品は何でしょう?」
(答え:白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)
この問題を出すと、たいていの高齢者の方々は目を輝かせて「テレビ!洗濯機!冷蔵庫!」と元気よく答えてくれます。そして自然と「うちで最初に買ったのは洗濯機だったわ」「テレビは近所で一軒だけ持っていて、子供たちが集まって見たものよ」といった思い出話が始まります。
また、昭和の流行歌や歌手に関するクイズも大人気です。
「『りんどう峠』や『高校三年生』などのヒット曲を歌った歌手は誰でしょう?」
(答え:舟木一夫)
こうした問題を出すと、歌い出す方もいらっしゃるほど。音楽は特に記憶に残りやすいようで、認知症が進行している方でも歌詞を完璧に覚えていることに驚かされます。
昭和の映画スターやアイドルの名前を当てるクイズも盛り上がります。
「美空ひばり、江利チエミと並んで『三人娘』と呼ばれた歌手は誰でしょう?」 (答え:島倉千代子)
昭和クイズの魅力は、単なる知識の確認ではなく、その時代を共有した連帯感と、若かった頃の記憶を呼び起こす懐かしさにあります。介護施設でも「昭和の日スペシャルクイズ」などのイベントが人気なのも納得ですね。
一方で、戦争や災害など辛い記憶を呼び起こす可能性のあるテーマは避けるなど、配慮も必要です。参加者の方々の年齢層や体験を考慮して、楽しい思い出を中心に取り上げるようにしましょう。
頭の体操!ことわざ・四字熟語クイズ
年齢を重ねても、昔学んだことわざや四字熟語の知識は意外としっかり残っているものです。これらを活用したクイズは、語彙力の維持や脳のトレーニングになると同時に、正解できた時の達成感も大きいため、高齢者の方々に人気があります。
例えば、穴埋め式のことわざクイズはいかがでしょうか。
「猫の○○に小判」
(答え:手)
「立つ鳥、後を○○」
(答え:濁さず)
「○○の花より団子」
(答え:花より団子)
少し難しくするなら、説明からことわざを当てる問題も。
「自分の欠点に気づかず、他人の小さな欠点ばかり責めることを表すことわざは?」 (答え:自分の目の中の梁を見ずに、他人の目のちりを見る)
四字熟語も同様に、穴埋め式や説明から当てる形式が楽しめます。
「一石○○」
(答え:二鳥)
「起死○○」
(答え:回生)
「完全無○」
(答え:欠)
このタイプのクイズでは、全員が知っているような簡単なものから、少し考えさせるものまで、バランスよく混ぜるのがコツです。あまり難しすぎると挫折感につながりますが、簡単すぎても物足りなく感じてしまいます。
また、正解が出なかった場合は、ヒントを出したり、選択肢を示したりするなど、柔軟に対応するとよいでしょう。例えば「鶴の○○」という問題で答えが出ない場合、「恩返しの話に出てくるアレですよ」とヒントを出すと、「あー!恩返し!」と思い出すきっかけになります。
言葉のクイズは、日本語の豊かさや知恵の深さを改めて感じる機会にもなり、会話も広がりやすい利点があります。「このことわざ、よく祖父が使っていたわ」「こういう意味だったのね」といった感想が自然と生まれるでしょう。
デイサービスのあるスタッフが教えてくれたのですが、ことわざクイズの後に、「あなたの座右の銘は?」と質問を投げかけると、普段はあまり話さない方からも思いがけない人生観が聞けて、新たな会話につながるそうです。クイズがコミュニケーションの入り口になるのですね。
笑いがとまらない!なぞなぞ・ダジャレクイズ
高齢者向けのクイズで意外と盛り上がるのが、なぞなぞやダジャレのクイズです。子供っぽく感じるかもしれませんが、実は簡単で親しみやすく、笑いを誘うという点で、場の雰囲気を和らげる効果抜群なのです。
特に、身近な物や日常生活に関するなぞなぞは、考えるヒントが思いつきやすく、誰もが参加しやすい利点があります。
例えば、こんなクラシックななぞなぞから始めるのはいかがでしょう。
「食べられるけれど、食べ物ではないものは何?」 (答え:時間・「時間を食べる」という表現から)
「いつも頭を下げているけれど、謝っていないものは?」 (答え:釘)
「逃げれば逃げるほど追いかけてくるものは?」 (答え:影)
少し頭をひねらせるものもいいですね。
「立てば寝て、寝れば立つものは何?」 (答え:足)
「人間の体で一番強いところはどこ?」 (答え:歯[負けない=歯が無い])
ダジャレも、思わず「うぅ~」となるようなシンプルなものが意外と喜ばれます。
「お相撲さんが恐れる果物は?」 (答え:苦手梨[梨が苦手])
「蚊が血を吸う時に言う言葉は?」 (答え:「いただきます」)
「鶏が意地悪な理由は?」 (答え:とさかさだから[意地悪だから])
こうした問題は、難しい知識を問うものではなく、言葉の面白さや発想の転換を楽しむものです。思考の柔軟性を保ち、笑いを通じて脳内にも良い刺激を与えます。
私が訪れた老人ホームでは、レクリエーションの始まりに必ずこうしたなぞなぞを出すというスタッフがいました。その理由を聞くと「笑うと脳が活性化して、その後のプログラムにも積極的に参加してくれるんです」とのこと。確かに、なぞなぞの後は皆さんの表情が柔らかくなり、会話も増えていました。
また、ダジャレを言い合うコーナーを設けると、普段は大人しい方も思い思いのダジャレを披露し始めて、場が一気に盛り上がることも。「そんなダジャレ、知らなかった!」と、新たな一面を発見する機会にもなります。
笑いは最高の薬とも言われますが、本当にその通りだと感じる瞬間です。特に高齢者の方々は、日常の中で笑う機会が減りがちなので、こうした「くすっ」と笑えるクイズは貴重な存在と言えるでしょう。
記憶力と観察力を鍛える!図形・絵クイズ
言葉だけでなく、視覚に訴えるクイズも高齢者の方々に好評です。特に、図形や絵を使ったクイズは、脳の異なる部分を使うため、認知機能の維持・向上に役立ちます。また、言語能力に自信がない方でも参加しやすいという利点もあります。
例えば、簡単な間違い探しは多くの方が楽しめるクイズです。二つの似た絵の違いを指摘するものや、一つの絵の中に隠れた間違いを見つけるものなど、様々なバリエーションがあります。
「この二つの家の絵、5つの違いがあります。どこが違うでしょう?」 (答え:窓の数、煙突の有無、ドアの色、など)
このタイプのクイズは、観察力を鍛えるだけでなく、発見する喜びも大きいので、自然と「あ、見つけた!」という声が上がります。
また、シルエットクイズも人気があります。身近な物のシルエットを見せて、それが何かを当てるもので、形の認識能力を刺激します。
「この黒いシルエットは何でしょう?」 (電話機、やかん、傘など身近なものがおすすめ)
少し複雑なものとしては、部分拡大クイズがあります。身近な物の一部を拡大した写真を見せて、それが何かを当てるクイズです。
「これは何の一部でしょう?」 (硬貨の模様、野菜の断面、日用品の一部など)
記憶力を試すクイズとしては、一瞬だけ複数の物の絵や写真を見せて、何が写っていたかを答えてもらうものがあります。最初は3〜4個の物から始めて、徐々に増やしていくと、挑戦する意欲が湧きます。
「今から5つの食べ物の絵を見せます。何が写っていたか覚えていてくださいね」 (10秒間見せた後) 「何が写っていましたか?」
これらの視覚的なクイズは、紙に印刷したものを使うこともできますし、タブレットやスマートフォンのアプリを活用することもできます。特に、拡大機能を使えばより細部まで見やすくなるため、視力が衰えている方にも配慮ができますね。
ある介護施設では、こうした図形・絵クイズの時間が、「お孫さんが持ってきたタブレットで遊ぶ」きっかけになったとか。テクノロジーに触れる機会が少ない高齢者の方にとっては、クイズという親しみやすい入り口から新しいものに挑戦する機会にもなるのです。
みんなで楽しむ!音楽・サウンドクイズ
聴覚を使ったクイズも、高齢者の方々に大変喜ばれます。特に、音楽に関するクイズは記憶を強く呼び起こし、感情にも働きかけるため、参加者の活気を引き出す効果があります。
最も定番なのは、イントロクイズでしょう。懐かしい歌の出だしを聴いて、曲名や歌手名を当てるものです。
「この歌は何でしょう?」 (『リンゴの唄』、『上を向いて歩こう』、『東京ブギウギ』など昭和の名曲を中心に)
曲名が分かったら、みんなで歌うことにつなげると、さらに場が盛り上がります。歌うことは脳の広い範囲を使うだけでなく、呼吸機能の維持にも役立ちますので、クイズから自然な形で歌唱活動に移行できる点でもおすすめです。
また、効果音当てクイズも面白いものです。日常の音(電話のベル、炊飯器の完了音、雨の音など)や動物の鳴き声などを聞いて、何の音かを当てます。
「これは何の音でしょう?」 (答え:風鈴、電車の踏切、蝉の鳴き声など)
このタイプのクイズは、聴覚の衰えを感じている方でも、馴染みのある音なら認識しやすく、積極的に参加できるでしょう。また、「この音を聞くとどんな場面を思い出しますか?」と問いかけると、自然と思い出話へと発展していきます。
さらに、声優や俳優の声当てクイズも楽しいものです。昔のラジオドラマやアニメ、映画などで活躍した声の主を当てるクイズです。
「この声は誰でしょう?」 (渥美清、森繁久彌、市原悦子など、特徴的な声の役者さんがおすすめ)
音楽や音のクイズは、視力の衰えた方でも楽しめるという利点があります。また、口ずさんだり、思い出話をしたりと、自然な形で会話が広がるきっかけにもなります。
私の祖母は視力がかなり衰えていましたが、音楽クイズの時間は特に生き生きとしていました。「この歌、私が20歳の時に流行ったのよ」「この声は加山雄三さんでしょ、映画も素敵だったわ」と、普段は聞けないような若い頃の話をたくさんしてくれたものです。
実施する際のポイントとしては、音量調整に気を配ることが大切です。難聴の方も参加できるよう、適切な音量で、クリアな音源を使用するようにしましょう。また、必要に応じて歌詞カードなどの視覚的な補助も用意すると良いでしょう。
世代をつなぐ!昔と今の比較クイズ
高齢者の方々が若い世代と一緒に楽しめるクイズとして、昔と今の違いを比較するクイズがあります。これは、高齢者の方々の経験や知識を活かしながら、若い世代との交流を深める絶好の機会となります。
例えば、物の値段の変化を問う問題は、世代間で盛り上がります。
「昭和30年代の郵便はがきの値段はいくらだったでしょう?」
(答え:5円)
「現在のはがきの値段と比べると、何倍になっていますか?」
(答え:約16倍[現在は84円])
こうした問題をきっかけに、「当時の給料はいくらだったか」「何が買えたか」といった話が広がります。若い世代は「えー!そんなに安かったの?」と驚き、高齢者の方々は当時の生活の様子を楽しそうに語ってくれます。
また、道具や生活習慣の変化に関するクイズも面白いですね。
「この道具は何に使うものでしょう?」
(昔の炭火アイロン、黒電話、蓄音機などの写真や実物を見せる)
「今でいう○○にあたるものは、昔は何と呼ばれていましたか?」
(冷蔵庫→氷冷蔵庫、テレビ→茶の間の窓など)
家族で楽しむ場合は、祖父母世代が若い頃の遊びや学校生活に関するクイズも会話が弾みます。
「昔の小学生はどんなおやつを食べていましたか?」
「昭和の子どもたちに人気だった遊びは何ですか?」
こうしたクイズは、単なる知識の確認だけでなく、世代間の理解を深め、家族の絆を強める効果もあります。孫世代が「へぇ、おばあちゃんの時代はそうだったんだ」と興味を持ち、祖父母世代は「あなたの親も小さい頃はこうだったのよ」と語る。そんな自然な会話が生まれることで、家族の歴史が次の世代に受け継がれていくのです。
デイサービスやグループホームなどでも、若いスタッフと高齢者の利用者が一緒に楽しめるプログラムとして取り入れられることが多いようです。時には「昔チームvs今チーム」のような対抗戦形式にすることで、より一層盛り上がりますよ。
このような世代間交流は、高齢者の方々にとっては自分の経験や知識が役立つ喜びがあり、若い世代にとっては生きた歴史を学ぶ貴重な機会となります。何より、お互いを尊重し合える関係性が自然と育まれるのが素晴らしいところです。
脳トレにもなる!計算・パズルクイズ
「年齢を重ねると計算力が落ちる」とよく言われますが、実は定期的な脳トレーニングで維持・向上できることが分かっています。簡単な計算問題やパズルは、脳の活性化に効果的なクイズの一つです。
例えば、身近な数字を使った計算問題は、日常生活にも役立ちます。
「98円の物を買って100円出すと、おつりはいくら?」 「500円の物を3つ買うと、合計はいくら?」
これらは一見簡単そうに見えますが、暗算で素早く答えるとなると、良い頭の体操になります。また、買い物の場面を想定した問題は、実生活にも直結するため、より身近に感じられるでしょう。
少し複雑な問題としては、規則性を見つける問題があります。
「1, 3, 5, 7, □ 次の数字は何でしょう?」
(答え:9[奇数の連続])
「1, 4, 9, 16, □ 次の数字は何でしょう?」
(答え:25[1の2乗、2の2乗、3の2乗、4の2乗、5の2乗])
こうした問題は、パターンを見抜く力を鍛えます。最初は簡単なものから始めて、徐々に難易度を上げていくと、挑戦する意欲が湧いてきます。
また、論理パズルも脳に良い刺激を与えます。有名な「ウミガメのスープ」のような話題を限定したものではなく、もっと身近な状況設定のパズルが高齢者向けには適しているでしょう。
「AさんとBさんが東と西から歩いてきて出会いました。二人は同じ速さで歩いていて、出会った後もそのまま進み続けます。Aさんが西の終点に着いたのは11時、Bさんが東の終点に着いたのは13時でした。二人が出会ったのは何時でしょう?」 (答え:12時)
このような問題は、グループで相談しながら解くと、コミュニケーションも生まれて一石二鳥です。
さらに、図形パズルも認知機能の維持に効果的です。例えば、簡単な折り紙パズルは手先の運動にもなりますし、タングラムのような図形を組み合わせるパズルも楽しめます。
「この7つのピースを使って、四角形を作ってください」 「この折り紙を三回折って、一回だけハサミを入れます。どうすれば星型が切り抜けるでしょう?」
こうしたパズル系のクイズは、正解不正解だけでなく、解決に向けてのプロセスを楽しむことができます。全員で考え、アイデアを出し合う過程そのものが、コミュニケーションを促し、脳を活性化させるのです。
ある研究では、定期的に計算問題やパズルに取り組む高齢者は、認知機能の低下が緩やかだという結果も出ています。日常の中に少しずつこうした「脳の体操」を取り入れることで、いつまでも活発な思考力を維持できるのではないでしょうか。
クイズを楽しむためのコツと配慮点
高齢者の方々とクイズを楽しむ際には、いくつかのコツや配慮点があります。ここでは、より楽しく意義のあるクイズタイムにするためのポイントをご紹介します。
まず何より大切なのは、参加者全員が楽しめる難易度設定です。あまりに簡単すぎると物足りなく、難しすぎると挫折感につながります。まずは成功体験を味わえる易しい問題から始めて、徐々に難易度を上げていくと良いでしょう。また、幅広い難易度の問題を混ぜることで、様々な方が活躍できる場面を作ることもできます。
次に、視覚や聴覚の衰えに配慮することも重要です。文字は大きめに、はっきりとした色で示し、音声は明瞭にゆっくりと伝えましょう。また、紙に書いて見せるなど、複数の感覚に訴える工夫もあると良いですね。
また、競争よりも協力を重視する姿勢も大切です。「早く答えた人の勝ち」というルールよりも、「みんなで考えて答えを出そう」という形式の方が、多くの方が参加しやすく、達成感も共有できます。もちろん、元気で競争心が旺盛な参加者が多い場合は、適度な競争要素を取り入れることで活気が生まれることもあります。
記憶力や認知機能に個人差があることにも配慮が必要です。答えが出てこない場合は、焦らせず、ヒントを出したり、選択肢を示したりするなど、サポートを心がけましょう。「思い出せない」という経験がストレスにならないよう、さりげなくフォローする姿勢が大切です。
ユーモアを交えながら進行することも効果的です。間違った答えでも「おもしろい発想ですね!」と受け止めたり、司会者自身が冗談を交えたりすることで、リラックスした雰囲気が生まれます。笑いのある場では、脳内の良い物質も分泌されると言われていますね。
最後に、クイズを通じた会話の広がりを大切にしましょう。クイズ自体も楽しいですが、そこから生まれる思い出話や意見交換こそが、より深いコミュニケーションにつながります。「このクイズを聞いて何か思い出しましたか?」「似たような経験はありますか?」といった問いかけで、自然と会話を広げていくのも良いでしょう。
私の経験からも、単なる問題出しに終わるよりも、答えをきっかけに「私の若い頃は…」という話に花が咲く時間の方が、参加者の皆さんの表情が明るく、活気に満ちていました。クイズは目的ではなく、コミュニケーションの入り口と考えると、より豊かな時間が生まれるのではないでしょうか。
家族やコミュニティでの活用法
クイズは単に施設やデイサービスだけでなく、家族の集まりやご近所のコミュニティでも活用できる素晴らしいコミュニケーションツールです。ここでは、日常生活の中でクイズを取り入れるアイデアをご紹介します。
家族での活用法としては、お孫さんと祖父母が一緒に楽しめるクイズ大会を開いてみるのはいかがでしょう。例えば、「おじいちゃん・おばあちゃんの若い頃チーム」vs「現代の孫チーム」というように、それぞれの世代の得意分野を活かした対抗戦が盛り上がります。祖父母世代は昭和の常識問題、孫世代は最新のIT用語や流行など、お互いの知識を教え合う場にもなります。
夕食時や団らんの時間に、「今日のクイズタイム」として、簡単な問題を1〜2題出し合う習慣をつけるのも素敵ですね。「今日学校で知ったんだけど…」「昔はね…」と、自然と会話が広がります。特に普段あまり話さないティーンエイジの孫と祖父母の間にも、クイズを通じた会話の橋が架かるかもしれません。
ご近所や地域のコミュニティでは、「シニアクイズサークル」のような形で定期的に集まりを持つのも良いですね。各回のテーマを決めて(「昭和の映画特集」「ご当地問題」など)、持ち回りで問題を出し合うことで、準備する側も楽しめます。
また、地域の小学校との交流会で、「昔の遊び・暮らし」をテーマにしたクイズ大会を開くのも意義深い活動です。高齢者の方々が問題を出題し、子どもたちが答えるというスタイルで、世代間交流を図ることができます。その後、昔の遊びを実際に教えるワークショップに発展させることも可能でしょう。
現代では、オンラインツールを使って離れて暮らす家族とクイズを楽しむこともできます。ビデオ通話を使って「オンライン・クイズ大会」として、定期的に顔を合わせる機会を作るのです。特に遠方に住む高齢の親族とのコミュニケーションツールとして活用すれば、単なる「元気?」の会話を超えた、楽しい交流の時間が生まれるでしょう。
さらに、地域の介護施設やデイサービスへのボランティアとして、クイズの司会や問題作成を手伝うのも素晴らしい貢献になります。特に若い世代が参加することで、施設の方々に新鮮な刺激をもたらすことができます。
クイズは特別な道具や準備がいらず、どこでも誰でも始められるという利点があります。日常のちょっとした時間に取り入れて、笑顔と会話があふれる時間を作ってみませんか?
まとめ:クイズが紡ぐ笑顔と記憶のタペストリー
ここまで様々なタイプのクイズと、その活用法について見てきました。クイズは単なる頭の体操を超えて、記憶を呼び覚まし、笑顔を生み出し、人と人をつなぐ素晴らしいツールだということがお分かりいただけたと思います。
冒頭でお話しした、デイサービスで生き生きとクイズに参加していた田中さんのような変化は、決して珍しいことではありません。日常の中に適切な刺激と楽しみを取り入れることで、高齢者の方々の表情が明るくなり、会話が増え、活気が生まれる—そんな場面を、私たちはもっと作り出せるのではないでしょうか。
クイズを通じて呼び起こされる記憶は、その人の人生の宝物です。若かりし日の思い出、努力して身につけた知識、大切な人との経験...それらが紡ぎだすのは、一人ひとりのかけがえのない物語です。そして、その物語を共有することで、世代を超えた理解と絆が生まれていきます。
高齢化が進む現代社会において、私たちが直面しているのは、単に「長生き」するだけでなく、いかに「生きがい」と「つながり」を持って生きるかという課題です。クイズのような、一見シンプルな活動の中にこそ、その答えのヒントがあるのかもしれません。
思い出してみてください。クイズに正解した時の高齢者の方の輝く目、懐かしい話に花が咲く和やかな時間、孫と一緒に考える姿...。そこには確かに「生きる喜び」があります。
私自身、祖父母とのクイズタイムを通じて、彼らの若かりし日の姿や、今まで知らなかった人生の一面を知ることができました。それは、家族の歴史を理解し、自分のルーツを感じる貴重な機会となりました。
さあ、今日からあなたも、家族や地域の高齢者の方々とクイズを楽しんでみませんか?簡単なことから始めて、徐々に広げていくことで、きっと新しい会話と笑顔の輪が広がっていくことでしょう。
高齢者の方々が持つ豊かな経験と知恵を、クイズという形で引き出し、共有する。それは決して大げさではなく、私たちの社会をより温かく、つながりのあるものにする小さな、でも確かな一歩なのです。