「男は浮気するものよ」そんな言葉を、何度聞いたことでしょう。井戸端会議で、お茶飲み話で、時にはテレビのワイドショーで。でも、本当にそうなのでしょうか。長年連れ添ってきた夫を見ていると、「うちの人は違う」と思いたい。でも一方で、「もしかして」という不安が消えない。
特に定年を迎えて、夫婦二人きりの時間が増えた今。あるいは、老後を一緒に過ごすパートナーを探している今。「男性は浮気する生き物」という言葉の真偽が、どうしても気になってしまいます。
今日は、60代、70代のリアルな声を集めながら、この難しいテーマについて、一緒に考えていきましょう。答えは一つではないかもしれません。でも、人生の後半戦だからこそ見えてくる真実があるはずです。
「男は浮気するもの」という言葉の重み、シニア世代の経験から
結婚40年、50年と長い年月を共に過ごしてきた世代の方々は、この言葉をどう受け止めているのでしょうか。実は、シニア世代の方々の答えは、驚くほど多様なのです。
68歳の女性はこう話します。「若い頃は『男はみんなそう』って諦めていました。でも夫は40年間、一度も浮気しなかった。それどころか、私が病気で入院した時、毎日お見舞いに来てくれて。『男はみんな』なんて、誰が決めたんでしょうね」
一方、65歳の別の女性は違う経験を語ります。「夫の浮気を知ったのは、子供が独立した後でした。『男だから仕方ない』って周りは言ったけど、40年一緒にいて、そんな言葉で納得できるわけがない。傷ついたのは事実です。でも、それで『男はみんな浮気する』とは思いません。夫の問題であって、男性全体の問題じゃない」
この二つの声が示すのは、「男性は浮気する生き物」という一般化が、いかに個人の実態とかけ離れているかということです。
昔の常識、今の常識、そして真実
私たちの若い頃は、「男の浮気は甲斐性」なんて言葉もありました。会社の飲み会で遅く帰ってくる夫に、何も聞かない。それが「良い妻」だとされた時代もありました。
でも、時代は変わりました。今の60代、70代の男性に聞いてみると、実に興味深い答えが返ってきます。
72歳の元会社役員の男性は、こう打ち明けてくれました。「若い頃の会社では、確かに浮気が当たり前みたいな雰囲気がありました。でも、私は一度もしなかった。なぜかって? 妻を裏切ることが、自分自身を裏切ることだと思ったからです。それに、妻の目を見て嘘をつく自分を想像したら、耐えられなかった」
彼の言葉には、深い誠実さがありました。そして彼は続けます。「同僚の中には浮気をした人もいました。でも、そういう人は結局、家庭でも仕事でも信頼を失っていった。浮気は『男の本能』じゃなくて、『個人の選択』なんですよ」
ここで少し面白い話を。私の知り合いの75歳の男性は、若い頃、職場の女性から食事に誘われたことがあったそうです。「浮気のチャンス」と周りに冷やかされましたが、彼は断りました。理由を聞くと「妻に『今日、誰と何したの?』って聞かれた時、嘘をつくのが面倒だから」と。思わず笑ってしまいましたが、これも一つの真実です。浮気をしない理由は、崇高な理念だけでなく、日常の小さな誠実さの積み重ねでもあるんですね。
生物学的に見た「浮気」の誤解
「男は本能的に浮気する」という説明を、聞いたことがある方も多いでしょう。テレビの解説者や、時には医者までもが、「男性ホルモンが」「遺伝子が」と説明します。
でも、ちょっと待ってください。人間は、本能だけで生きているわけではありません。もしそうなら、お腹が空いたら食べ放題、眠くなったら寝放題、となってしまいます。でも、私たちは違います。
70歳の元医師の男性がこう語ります。「確かに、新しい刺激に惹かれるのは生物としての自然な反応です。でも、人間には理性がある。感情をコントロールする能力がある。『本能だから仕方ない』なんて言い訳は、人間の尊厳を否定することです」
彼自身、医師として多くの夫婦を見てきました。「浮気をする男性と、しない男性の違いは、生物学的なものではなく、人格的なものでした。自分の感情と向き合える人、パートナーを大切にできる人は、浮気をしません。逆に、自分の問題から逃げる癖がある人は、浮気に走りやすい」
これは、長年の観察から得た結論だそうです。そして、彼は付け加えます。「年を重ねてわかったのは、一人のパートナーと深く結びつく喜びの方が、表面的な刺激よりもずっと豊かだということです」
定年後の夫婦、そこに見える真実
定年を迎えると、夫婦の関係は新しい局面を迎えます。毎日家にいる夫。時間を持て余す夫。そして、長年の習慣から突然解放された夫。
この時期、実は浮気のリスクが高まるという話もあります。でも、同時に、夫婦の絆が深まる時期でもあるのです。
67歳の男性は、定年後の心境をこう語ります。「定年してすぐの頃は、正直なところ、寂しかった。会社では必要とされていたのに、家では居場所がない気がして。その時、カルチャーセンターで出会った女性に、優しくされて心が揺れました」
彼の正直な告白に、思わず引き込まれます。「でも、ある日、妻が私のためにお弁当を作って、『二人で公園に行きましょう』って誘ってくれたんです。初めてのデートみたいに恥ずかしくて。その時気づいたんです。私が求めていたのは、新しい刺激じゃなくて、必要とされている実感だったって」
彼は今、妻と二人で趣味の山登りを楽しんでいます。「40年一緒にいて、今が一番楽しいかもしれません。若い頃は仕事に追われて、妻とゆっくり話す時間もなかった。今は毎日、新しい発見がある。こんな関係が築けるのに、浮気なんてもったいないですよ」
彼の心の声:あの時、もし一線を越えていたら、今のこの穏やかな日々はなかったでしょう。妻の笑顔も、孫が遊びに来る楽しみも、全て失っていた。誘惑に負けなかった自分を、今は誇りに思います。でも、正直に言えば、妻が手を差し伸べてくれなかったら、どうなっていたか分かりません。
浮気をした男性、しなかった男性、それぞれの人生
ここで、対照的な二人の男性の話をご紹介します。どちらも70代、どちらも長い人生を歩んできた方々です。
まず、69歳の男性。彼は50代の頃、部下の女性と浮気をしました。「その時は、まだ自分が魅力的だと確認したかったんです。家では妻にも相手にされず、会社では若手に追い抜かれる。そんな焦りがありました」
浮気は2年続きましたが、結局妻に知られます。「妻は泣きませんでした。ただ、悲しそうに『私、何が足りなかったの?』って聞いてきた。その時初めて、自分が何をしていたか気づきました」
離婚の危機を乗り越え、夫婦はカウンセリングを受けました。「わかったのは、浮気の原因は妻にあるんじゃなくて、自分の中にあったということです。承認欲求の強さ、老いへの恐怖、自分と向き合えない弱さ」
今、彼は妻との関係を再構築しています。「完全に元通りにはならないかもしれません。でも、以前よりも正直に、深く向き合えている気がします。浮気をしたことを正当化はしません。ただ、そこから学んだことはあります」
彼の心の声:妻の目を見られない日々がどれほど辛かったか。孫に「おじいちゃん、なんでおばあちゃん悲しそうなの?」って聞かれた時、心が引き裂かれる思いでした。男の本能なんて、都合のいい言い訳でした。ただの弱さだったんです。
一方、73歳の別の男性は、45年の結婚生活で一度も浮気をしませんでした。「誘惑がなかったわけじゃありません。でも、妻との約束を破ることが、自分の人生の土台を壊すことだとわかっていました」
彼は若い頃から、妻とのコミュニケーションを大切にしてきました。「仕事で疲れている時も、『今日、どんなことがあった?』って聞く習慣をつけました。妻の話を聞く。自分の気持ちも話す。それだけで、二人の間に壁ができないんです」
定年後、彼は妻と一緒に地域のボランティアを始めました。「二人で新しいことに挑戦する。それが楽しくて。若い頃は仕事が忙しくてできなかったことを、今、二人でやっている。人生の後半戦が、こんなに充実するなんて思いませんでした」
彼の心の声:正直に言えば、他の女性に心惹かれたことはあります。でも、その度に妻の顔を思い浮かべました。「この人を悲しませたくない」。それだけでした。難しい理論じゃなく、シンプルにそれだけ。そして今、その選択を続けてきて本当によかったと思います。
女性の視点から見た「浮気する男性、しない男性」
64歳の女性は、長年の観察からこう分析します。「夫は一度も浮気しませんでした。でも、友人の夫は何度も浮気を繰り返した。二人の違いを見ていて気づいたのは、『自分の感情と向き合える人かどうか』でした」
彼女の夫は、困ったことがあると必ず相談してきたそうです。「仕事でミスをした」「後輩に追い抜かれて悔しい」「老いを感じて不安だ」。そういった弱みを見せられる人でした。
「一方、友人の夫は、いつも強がっていました。『男は弱音を吐かない』『家庭に仕事の話は持ち込まない』。そうやって自分を閉ざして、結局外に逃げ場を求めたんだと思います」
この洞察は深いものがあります。浮気をする男性は、パートナーと本当の意味で向き合えていないのかもしれません。
別の66歳の女性は、夫の浮気を乗り越えた経験を語ります。「夫が浮気をした時、周りは『男なんてそんなもの』って慰めてくれました。でも、私は納得できなかった。『そんなもの』で済ませていいことじゃない」
彼女は夫に徹底的に話し合いを求めました。「なぜ浮気をしたのか。私の何が不満だったのか。これからどうしたいのか」。そして、夫も初めて自分の心と向き合いました。
「わかったのは、夫は私に不満があったわけじゃなくて、自分自身に不安があったということです。老いていく自分、衰えていく自分を認められなかった。若い女性に求められることで、それを忘れたかった」
二人はカウンセリングを受け、今も夫婦として歩んでいます。「許したわけじゃありません。でも、夫が変わろうとしている姿を見て、もう一度信じてみようと思いました。そして今、以前よりも深い関係が築けています」
シニア世代だからこそ考えたい、本当の親密さ
60代、70代になって気づくことがあります。それは、本当の親密さとは何か、ということです。
71歳の男性がこう語ります。「若い頃は、恋愛イコール情熱だと思っていました。ドキドキすること、新鮮であること。でも、年を重ねてわかったのは、本当の親密さは日常の中にあるということです」
朝、一緒にコーヒーを飲む時間。夕方、散歩をしながら他愛のない話をする時間。体調が悪い時、そっと寄り添ってくれる存在。「それが、どんな刺激的な恋愛よりも大切だとわかりました」
68歳の女性も同意します。「夫と50年近く一緒にいます。もちろん、ドキドキすることはもうありません。でも、夫が隣にいるだけで安心する。それが愛なんだと、今は思います」
彼女は続けます。「若い頃、夫が他の女性と楽しそうに話しているのを見て、嫉妬したことがありました。でも今は、夫が人と楽しく話せることを嬉しく思います。それは、私たちの関係が安定しているからです」
この安定感こそが、浮気を防ぐ最大の要因なのかもしれません。外に刺激を求める必要がないほど、二人の関係が豊かである時、浮気のリスクは大きく減ります。
人生の後半戦、信頼関係の大切さ
シニア世代にとって、信頼関係の重要性は計り知れません。なぜなら、これから先の人生を共に歩むパートナーとの関係が、生活の質を大きく左右するからです。
75歳の男性は、最近妻が認知症の診断を受けました。「若い頃、もし浮気をして妻との信頼関係を壊していたら、今、こうやって妻の介護をする気持ちになれたでしょうか。多分、無理だったと思います」
彼は毎日、妻の世話をしながら、昔の思い出話をします。「『覚えてる? あの時、二人で旅行に行ったね』って話すと、妻は笑顔になる。その笑顔を見ると、ああ、この人と一緒に生きてきてよかったって思うんです」
信頼は、長い年月をかけて築かれます。そして、その信頼があるからこそ、人生の困難な時期も二人で乗り越えられます。
別の70歳の女性は、夫を癌で亡くしました。「夫は最後まで、私に感謝の言葉をくれました。『君と一緒で幸せだった』って。その言葉が、今の私を支えています」
彼女は続けます。「もし、夫が生前、浮気をしていたら、この言葉を素直に受け取れたでしょうか。きっと無理だったと思います。誠実に生きてきたからこそ、お互いに後悔のない別れができた」
今日からできる、信頼関係を深める3つのこと
もし今、パートナーとの関係に不安を感じているなら、今日からできることがあります。
一つ目は、毎日の小さな会話を大切にすること。「今日、どんな一日だった?」「最近、何か楽しいことあった?」そんな何気ない会話が、二人の距離を縮めます。
二つ目は、感謝の気持ちを言葉にすること。「いつもありがとう」「あなたがいてくれて助かる」。当たり前だと思っていることに、改めて感謝を伝えてみましょう。
三つ目は、二人で新しいことに挑戦すること。新しい趣味でも、旅行でも、ボランティアでも。一緒に何かを始めることで、関係に新鮮さが生まれます。
これらは簡単なことのようで、実は長年の関係では忘れがちなことです。でも、こういった小さな積み重ねが、浮気を遠ざけ、信頼を深めます。
男性は浮気する生き物なのか、答えはあなたの人生の中に
結局のところ、「男性は浮気する生き物なのか」という問いに、一つの答えはありません。なぜなら、それは個人の選択であり、関係の質であり、人生の積み重ねだからです。
確かに、浮気をする男性はいます。でも、一生誠実に生きる男性もいます。そして、その違いは「男性だから」ではなく、「その人がどういう人か」によります。
70代、80代になっても、人は変わることができます。過去に間違いを犯した人も、そこから学んで成長できます。逆に、ずっと誠実に生きてきた人は、その選択を誇りに思っていいのです。
大切なのは、「男はみんな」という一般化で諦めることではなく、一人一人の人間性を見ること。そして、自分とパートナーの関係を、日々大切に育てていくことです。
人生の後半戦は、実は一番自由で、一番充実した時間になり得ます。長年のしがらみから解放され、本当に大切なものが見えてくる時期です。
そんな大切な時間を、信頼できるパートナーと共に過ごせること。それは、何にも代えがたい幸せです。そして、その幸せは、日々の誠実な選択の積み重ねの上に築かれます。
「男性は浮気する生き物」という言葉に惑わされることなく、目の前にいるその人を見てください。そして、もしあなたが男性なら、自分がどういう人間でありたいか、どういう人生を送りたいかを考えてみてください。
答えは、誰かが決めるものではありません。あなた自身が、毎日の選択で作っていくものです。そして、人生の終わりに振り返った時、「誠実に生きてきてよかった」と思えるような選択を、今日から積み重ねていけばいいのです。
年齢を重ねるごとに深まる関係、それこそが人生の宝物です。その宝物を大切に守り、育てていく。それが、シニア世代の私たちに与えられた、素晴らしい機会なのかもしれません。