人生を長く歩んでこられた皆さんなら、様々な人間関係を経験されてきたことでしょう。でも、年齢を重ねても、時には「あれ?なんだか違和感がある」と感じる人間関係に出会うことがありますよね。
今日は、そんな違和感の正体の一つである「責任転嫁をする人」について、お話ししたいと思います。家族、友人、地域のコミュニティ、趣味の仲間など、シニアの皆さんの周りにも、もしかしたらこういった特徴を持つ方がいるかもしれません。
責任転嫁とは何か
まず、「責任転嫁」という言葉について、少し考えてみましょう。これは、自分の失敗や問題の原因を、他の人や環境のせいにしてしまうことです。誰しも多少はそういう面があるものですが、問題なのは「常に」そうする人です。
長い人生を歩んでこられた皆さんは、様々な困難を乗り越えてきたはずです。失敗もあったでしょう。でも、その経験から学び、成長してきた。それが、今の皆さんを作っているのではないでしょうか。
ところが、世の中には、何歳になっても自分の非を認めず、いつも誰かのせいにする人がいます。そういう人と関わると、知らず知らずのうちに、私たちの心が疲れてしまうのです。
シニアの皆さんが出会う責任転嫁する人の特徴
では、具体的にどんな特徴があるのか、シニアの日常でよく見られる場面を交えながら見ていきましょう。
自分の非を決して認めない人
ある女性の話です。彼女は70代で、長年仲良くしていた友人がいました。ある日、その友人とランチの約束をしていたのですが、友人が時間を間違えて、1時間も遅れてきたのです。
彼女が優しく「時間、間違えちゃったのかな?」と聞くと、友人はこう言いました。「あなたの電話、聞き取りにくかったのよ。もっとはっきり話してくれないと」
実は、前日に彼女自身が「明日の12時ね」と何度も確認していたのです。でも、友人は自分が聞き間違えたことも、メモを取らなかったことも認めず、相手の話し方のせいにしてしまいました。
こういった人は、年齢を重ねても変わりません。むしろ、「私は年上なんだから」「人生経験が豊富なんだから」という気持ちが加わって、さらに自分の非を認めにくくなっていることもあります。
心理的には、自分が間違いを犯したことを認めると、自分の価値が下がると感じているのかもしれません。でも、本当は逆なんですよね。長い人生を歩んできた私たちは、素直に「ごめんなさい」と言える人こそが、本当に素敵な大人だと知っているはずです。
話をすり替えて相手を責める人
地域のボランティア活動で、こんなことがありました。ある男性が、担当していた資料作りを期限までに終わらせることができませんでした。みんなが困っていると、その男性はこう言ったのです。
「そもそも、こんなに短い期限を設定した人が悪いんじゃないか。それに、もっと早く資料の内容を教えてくれれば、できたはずだ」
実は、期限は全員で相談して決めたものでしたし、資料の内容も最初の会合で詳しく説明されていました。でも、その男性は自分が会合を欠席していたことも、その後誰にも確認しなかったことも棚に上げて、他の人を責めたのです。
こういう人と一緒に活動すると、本当に疲れてしまいます。何か問題が起きるたびに、「誰が悪い」という話になってしまい、建設的な解決策を考えることができないからです。
言い訳が多く約束を守らない人
シニアの皆さんの中には、お孫さんの面倒を見ることを楽しみにしている方も多いでしょう。でも、こんな経験をされた方もいるかもしれません。
ある祖母は、娘から「来週の土曜日、子どもを預かってもらえる?」と頼まれました。彼女は他の予定を調整して、孫を預かる準備をしました。おもちゃも用意して、孫の好きな料理も作って、楽しみに待っていたのです。
ところが、金曜日の夜になって、娘から「ごめん、やっぱり土曜日は無理になった。急な仕事が入っちゃって」と連絡が来ました。祖母は「そう、それは仕方ないわね」と理解を示しました。
でも、後で知ったのですが、娘はその土曜日に友人とショッピングに行っていたのです。「仕事」というのは嘘でした。祖母が予定を調整して準備したことへの配慮はなく、「急に友人に誘われたから」という理由で約束を破り、しかも嘘の言い訳をしたのです。
この祖母は深く傷つきました。約束を破られたことよりも、嘘をつかれたこと、そして自分の時間や気持ちが大切にされなかったことが、何よりも辛かったのです。
ここで少し余談ですが、面白い研究があります。ある心理学者が「年齢と謝罪の関係」について調べたところ、50代から70代の人は、若い世代に比べて「素直に謝ることができる」割合が高かったそうです。これは、人生経験を通じて、謝罪の大切さや、謝ることが恥ずかしいことではないと学んでいくからだと考えられています。つまり、年齢を重ねても謝れない人は、実は心が成長していないのかもしれませんね。
謝罪に必ず「でも」「だって」がつく人
老人クラブの活動で、会計を担当している女性がいました。ある時、お金の計算を間違えて、会費の金額が合わなくなってしまいました。みんなが心配していると、彼女はこう言いました。
「ごめんなさいね。でも、この計算表、すごく見づらいのよ。もっと字を大きくしてくれれば、間違えなかったと思うわ。それに、最近老眼がひどくなって...」
確かに、老眼は誰にでも起こることです。でも、本当に謝る気持ちがあるなら、「ごめんなさい。次からはもっと注意します」で終わるはずです。「でも」「だって」をつけて言い訳を並べるのは、本当は自分が悪いと思っていない証拠なのです。
皆さんも経験があるかもしれませんが、心から謝られた時と、「でも」つきの謝罪では、受ける印象が全く違いますよね。前者は関係を修復してくれますが、後者はさらに傷つけることさえあります。
自分の感情や行動の責任を他人に押し付ける人
ある男性は、持病があって定期的に病院に通わなければなりませんでした。でも、なかなか病院に行かず、症状が悪化してしまいました。
奥さんが「もっと早く病院に行けばよかったのに」と心配すると、その男性はこう言いました。「お前がちゃんと予約を取ってくれないからだろう。病院の電話番号も教えてくれなかった。俺が忙しいの、知ってるくせに」
実は、奥さんは何度も「病院に行ったら?」と声をかけていましたし、病院の診察券も分かりやすい場所に置いてありました。でも、この男性は自分の健康管理の責任まで、奥さんに押し付けようとしたのです。
シニアになると、健康管理はとても大切です。でも、基本的には自分の健康は自分で管理するもの。もちろん、家族がサポートしてくれるのは有難いことですが、それは家族の「義務」ではなく「優しさ」です。その区別がつかない人は、周りの人を疲弊させてしまいます。
過去の失敗を持ち出して攻撃する人
地域のサークル活動で、こんなことがありました。新しい企画を提案した女性に対して、別のメンバーがこう言ったのです。
「あなたの提案はいつも現実的じゃないのよ。去年も、あの失敗した企画を提案したじゃない。それに、3年前の旅行の時も、あなたの選んだホテルは最悪だったわよね」
実は、その時話し合っていたのは全く別の新しい企画についてでした。でも、この人は新しい提案について建設的に議論するのではなく、過去の失敗を持ち出して、提案者を攻撃したのです。
こういう人がいると、誰も新しいアイデアを出せなくなってしまいます。失敗を恐れて、誰もチャレンジしなくなる。それは、グループ全体にとって大きな損失です。
なぜ責任転嫁する人がいるのか
ここまで、責任転嫁する人の特徴を見てきました。では、なぜこういう人がいるのでしょうか。
一つには、自己肯定感の低さがあります。意外に思われるかもしれませんが、責任転嫁する人は、実は自分に自信がないのです。だから、自分の失敗を認めることができない。失敗を認めたら、自分の価値がなくなってしまうと恐れているのです。
もう一つは、成長の機会を逃してきたということ。人は失敗から学び、成長します。でも、いつも失敗を他人のせいにしていると、そこから何も学べません。だから、何歳になっても同じような失敗を繰り返し、同じような言い訳をし続けるのです。
責任転嫁する人との付き合い方
では、私たちはこういう人とどう付き合えばいいのでしょうか。
まず大切なのは、「自分は悪くない」ということを忘れないことです。責任転嫁する人と関わっていると、「もしかして本当に私が悪いのかな?」と思ってしまうことがあります。でも、多くの場合、それは相手の問題であって、あなたの問題ではありません。
ある女性は、娘から何かにつけて「お母さんが〇〇してくれないから」と責められていました。最初は「私が悪い母親だからかしら」と自分を責めていましたが、ある日、他の友人たちと話していて気づいたのです。自分は十分に良い母親だった、娘が自分の問題を母親のせいにしているだけなのだ、と。
その気づきから、彼女は娘に対して、優しくでもはっきりと「それはあなた自身の問題よ。お母さんのせいにしないで」と言えるようになりました。最初は娘も反発しましたが、徐々に自分のことは自分で考えるようになり、今では良い関係を築いているそうです。
距離を置くことも大切
もし、家族や親しい友人が責任転嫁する傾向があるなら、関係を改善する努力をする価値はあるでしょう。でも、それでも変わらない場合や、そこまで親しくない相手の場合は、距離を置くことも一つの選択肢です。
シニアの皆さんの中には、「年齢を重ねたのだから、人とうまく付き合わなければ」と思っている方もいるかもしれません。でも、人生の残された時間は有限です。自分を疲れさせる人間関係に時間を使うよりも、心地よい関係に時間を使う方が、ずっと豊かな人生になるのではないでしょうか。
ある男性は、長年の友人グループの中に、いつも他人のせいにする人がいました。その人がいると、楽しいはずの集まりが、いつも誰かの批判大会になってしまう。彼は思い切って、その人抜きで別のメンバーと集まるようになりました。
最初は罪悪感がありましたが、そのメンバーも実は同じように感じていたことが分かり、今では以前よりずっと楽しい時間を過ごせているそうです。「もっと早くそうすればよかった」と、彼は笑って言っています。
自分自身を見つめ直す機会にも
ここまで、責任転嫁する人について話してきましたが、時には自分自身を見つめ直すことも大切です。私たち自身も、知らず知らずのうちに、他人のせいにしていることはないでしょうか。
例えば、「子どもが忙しくて連絡してこないから寂しい」と思っている時、本当は自分から連絡できるのに、していないだけかもしれません。「最近友人と会えないのは、みんなが誘ってくれないから」と思っている時、自分から誘ってみたことはあるでしょうか。
完璧な人間はいません。誰だって、時には言い訳をしたり、人のせいにしたりすることがあります。大切なのは、それに気づいて、直していこうとする姿勢です。
健康的な人間関係とは
長い人生を歩んできた皆さんなら、きっとご存じのはずです。健康的な人間関係とは、お互いが責任を分かち合い、失敗を認め合い、助け合える関係のことです。
失敗した時には素直に「ごめんなさい」と言える。困っている時には「助けて」と言える。そして、相手が失敗した時には優しく許せる。そんな関係こそが、私たちの人生を豊かにしてくれるのではないでしょうか。
ある夫婦の話です。彼らは結婚50年を迎えましたが、その秘訣を聞かれてこう答えました。「お互いに『ごめんね』と『ありがとう』を言い続けること。完璧な人間なんていないから、失敗したら素直に謝る。そして、相手がしてくれたことには感謝する。それだけで、大抵のことはうまくいくんですよ」
シンプルですが、本当に大切なことですよね。