シニアからのはるめくせかい

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五十代、六十代になってからの職場での出会い

人生の後半に訪れる恋は、若い頃とは違う深い味わいがあります。

あなたは今、職場で気になる方がいらっしゃるのではないでしょうか。もしかしたら、長年一緒に働いてきた同僚の方かもしれません。あるいは、転職先で出会った素敵な方かもしれません。でも、気持ちがあっても、なかなか一歩を踏み出せない。そんな戸惑いを感じていませんか。

五十代、六十代になってからの職場での出会いは、二十代や三十代の頃とは全く違う重みを持っています。背負っているものが違う。守るべきものがある。そして何より、積み重ねてきた人生がある。だからこそ、簡単には動けない。それは決して臆病なのではなく、むしろ成熟した大人としての賢明な判断なのです。

私はこれまで、多くのシニア世代の方々の恋愛や人間関係のご相談に乗ってきました。その中で何度も耳にしたのが、「職場で好きな人ができたけれど、なかなか進展しない」という悩みです。若い世代とは違う、独特の葛藤がそこにはあります。今日は、そんなあなたの気持ちに寄り添いながら、なぜ職場恋愛は時間がかかるのか、そしてそれがなぜ悪いことではないのかをお話ししていきたいと思います。

まず考えてみてください。若い頃の恋愛と、今の恋愛では、何が違うでしょうか。

若い頃は、失敗してもやり直せる時間がありました。別れても、また次の出会いがある。職場を変えることだって、それほど難しくはなかった。でも今は違います。長年積み上げてきたキャリアがあります。職場での信頼関係があります。同僚や部下からの尊敬があります。そして何より、定年までの時間を考えると、職場を変えることは現実的ではないかもしれません。

だからこそ、職場での恋愛は慎重にならざるを得ないのです。

ある男性の話を聞いてください。彼は六十歳で、大手企業の部長職でした。妻とは五年前に死別し、一人暮らしをしていました。娘は結婚して独立し、孫も二人います。仕事一筋で生きてきた彼にとって、会社は人生そのものでした。

そんな彼が、同じ会社の五十五歳の女性に惹かれました。彼女は別の部署のマネージャーで、会議でよく顔を合わせる関係でした。知的で、仕事ができて、そして何より、彼女の笑顔には温かみがありました。話していると心が安らぐ。そんな存在でした。

でも、彼は動けませんでした。なぜか。

「もし関係がうまくいかなかったら、定年までの残り五年間、同じ会社にいることが苦痛になる」という恐怖がありました。若い頃なら笑い話で済ませられたかもしれない。でも今は違う。毎日顔を合わせる職場で、気まずい関係になることは想像しただけで胸が苦しくなりました。

そして何より、周囲の目が気になりました。部長という立場で、社内の女性に好意を寄せていることが知られたら、どう思われるだろう。「いい年して」と陰口を叩かれないだろうか。部下たちは、どんな目で見るだろうか。娘や孫に知られたら、どう思われるだろうか。

彼の心の中には、恋心と同時に、これほど多くの不安が渦巻いていたのです。

職場恋愛が時間がかかる最大の理由は、まさにこの「失うものの大きさ」です。

若い世代の職場恋愛とシニア世代の職場恋愛では、背負っているリスクの重さが根本的に違います。若い人たちは、最悪の場合、職場を変えることができます。キャリアを一から築き直すことも、まだ可能です。でもシニア世代は違います。定年が近い、あるいは既に定年後の再雇用で働いている。長年築いてきた人間関係やポジションは、簡単には取り戻せません。

ある女性は、五十八歳で総務部の課長をしていました。彼女は二十年前に離婚し、それ以来ずっと一人で生きてきました。仕事に打ち込み、キャリアを積み上げ、ようやく今の地位を手に入れました。

そんな彼女が、同じ部署の六十二歳の男性を意識するようになりました。彼は穏やかで、優しく、そして何より、彼女の仕事ぶりを心から尊重してくれる人でした。一緒にいると、長年張り詰めていた心の糸が、ふっと緩むような感覚がありました。

でも、彼女は怖かったのです。

「もし私から好意を伝えて、それが断られたら、職場での立場はどうなるだろう」という不安がありました。課長という立場で、部下たちの前で恥をかくことは耐えられない。そして何より、「この年齢で恋愛感情を持つなんて」と周囲から冷やかされることが怖かった。

若い頃なら、失敗しても笑って済ませられた。でも今は、積み重ねてきたものがあまりにも重い。その重みが、彼女の一歩を止めていました。

ここで、少し面白い話をしましょう。実は、昭和の時代には「社内結婚」というものが非常に一般的でした。多くの企業では、社員同士の恋愛や結婚を奨励していたほどです。会社によっては「社内結婚祝い金」まで出していました。当時は終身雇用が当たり前で、同じ会社で定年まで働くことが普通でしたから、社内で伴侶を見つけることは自然なことだったのです。

でも今は違います。セクハラやパワハラへの意識が高まり、職場恋愛そのものが「リスク」と見なされるようになりました。特に管理職の立場にある方々は、より慎重にならざるを得ません。時代は変わりました。でも、人を好きになる気持ちは、時代が変わっても変わらないものです。この矛盾が、シニア世代の職場恋愛を難しくしているのです。

さて、話を戻しましょう。

職場恋愛に時間がかかる二つ目の理由は、「相手の本当の姿を見極める必要がある」ということです。

職場では、誰もが「仕事の顔」をしています。部長は部長らしく、課長は課長らしく、それぞれの役割を演じています。でも、その人の本当の姿は、仕事以外の場面でしか見えません。

ある男性は、会社の役員でした。六十三歳。長年、会社のために尽くしてきました。そんな彼が、秘書課の五十九歳の女性に惹かれました。彼女は二十年以上、秘書として働いてきた、プロフェッショナルな女性でした。

でも、彼は悩みました。「彼女が自分に接する態度は、本当の彼女なのだろうか。それとも、役員に対する態度なのだろうか」と。

職場では、立場の違いが大きな影響を与えます。特に上司と部下、あるいは役員と一般社員という関係では、本当の対等な関係を築くことが難しい。相手が自分に優しくしてくれるのは、自分の人間性に惹かれているからなのか、それとも立場を考えての行動なのか。その見極めには、時間がかかります。

彼は、少しずつ彼女と仕事以外の場面で接する機会を作りました。会社の近くのカフェで、偶然を装って話しかけたこともありました。共通の趣味である書道について語り合ったこともありました。そうやって、一年半かけて、ようやく彼女の「素の顔」を知ることができたのです。

そして彼が気づいたのは、彼女もまた、彼の「役員としての顔」ではなく「一人の男性としての彼」を見ようとしてくれていたということでした。お互いに、仕事の肩書きを超えた関係を築くために、時間をかけて向き合っていたのです。

三つ目の理由は、「周囲への配慮」です。

シニア世代の職場恋愛では、若い世代以上に、周囲の目が気になります。特に、お子さんやお孫さんがいらっしゃる方は、「親が、あるいは祖父母が恋愛している」という事実を、家族にどう伝えるか悩みます。

ある女性は、五十七歳で、二人の娘がいました。夫とは十年前に離婚し、それ以来、娘たちを育てることと仕事に専念してきました。そんな彼女が、職場の六十歳の男性に惹かれました。

でも、彼女は娘たちに話せませんでした。「お母さん、恋愛してるの」と言われたら、どう答えればいいのか。娘たちは既に結婚していて、それぞれ家庭を持っています。母親の恋愛を応援してくれるだろうか、それとも反対するだろうか。

特に気になったのは、亡くなった父親のことでした。娘たちは父親のことをどう思っているだろう。もし母親が新しい人と交際していることを知ったら、父親への裏切りだと思うだろうか。

こうした家族への配慮が、彼女の行動を慎重にさせました。気持ちがあっても、簡単には動けない。それが、シニア世代の現実なのです。

一方、男性側にも独特の悩みがあります。

ある男性は、六十一歳で、課長職でした。彼には成人した息子が二人いて、孫も四人います。妻とは五年前に死別しました。そんな彼が、同じ会社の五十六歳の女性に惹かれました。

でも、彼が最も恐れたのは、「息子たちに笑われること」でした。もし「お父さん、この年で恋愛?」と言われたら、どう答えればいいのか。孫たちの前で、どんな顔をすればいいのか。

そして何より、亡き妻への申し訳なさがありました。妻の写真は今でもリビングに飾ってあります。仏壇には毎日手を合わせています。そんな自分が、新しい女性を好きになることは、妻への裏切りではないのか。

こうした葛藤が、彼の心を縛っていました。恋心と罪悪感。前に進みたい気持ちと、過去への忠誠心。その間で揺れ動く日々が、何ヶ月も続きました。

でも、ある日、彼は気づいたのです。妻は優しい人でした。自分が一人で寂しく過ごすことを、きっと望んでいない。むしろ、幸せになることを願っているはずだと。

その気づきが、彼の心を少しだけ軽くしてくれました。

時間がかかることは、決して悪いことではありません。むしろ、それはあなたが真剣に向き合っている証拠なのです。

若い頃の恋愛は、勢いで始まることもありました。でも今は違います。慎重に、丁寧に、相手のことを知っていく。そのプロセスには、時間が必要です。そしてその時間は、決して無駄ではありません。

実際に、時間をかけた恋愛は、深い絆を生みます。

ある夫婦の話をしましょう。彼らは同じ会社で働いていました。出会った時、彼は六十歳、彼女は五十七歳でした。お互いに、配偶者と死別していました。

最初は、ただの同僚でした。会議で顔を合わせる程度の関係。でも、少しずつ話をするようになり、お互いの人生について語り合うようになりました。彼の趣味は盆栽、彼女の趣味は茶道。全く違う世界に生きてきた二人でしたが、「人生の後半を大切に生きたい」という思いは共通していました。

交際を始めるまでに、二年かかりました。その間、二人は何度も食事に行き、お互いの家族について話し、過去の人生について語り合いました。焦ることはありませんでした。ゆっくりと、お互いを理解していきました。

そして、交際を始めてから一年後、二人は結婚しました。結婚式には、お互いの子供たちも孫たちも参加し、みんなが二人の門出を祝福しました。

「時間をかけたからこそ、お互いのことを本当に理解できた」と、彼は言います。「若い頃のような激しい恋愛ではないけれど、深い信頼と安心感がある。これが、大人の恋愛なんだと思います」

彼女も言います。「最初は、この年齢で恋愛なんてと思っていました。でも、人生の後半に素敵な伴侶を得られることが、こんなに幸せだとは思いませんでした」

この話から学べるのは、時間をかけることの価値です。焦る必要はありません。むしろ、ゆっくりと、丁寧に関係を築いていくことが、本当に深い絆を生むのです。

では、どうやって関係を進めていけばいいのでしょうか。

まず大切なのは、「仕事以外の接点を作ること」です。職場だけの関係では、相手の本当の姿は見えません。ランチを一緒に食べる、仕事帰りにお茶をする、共通の趣味について話す。そういった小さな積み重ねが、関係を深めていきます。

次に、「焦らないこと」です。シニア世代の恋愛には、若い世代とは違う時間の流れがあります。半年、一年、あるいは二年かかっても、それは普通のことです。むしろ、その時間があるからこそ、本当の信頼関係が築けるのです。

そして、「家族への配慮」も忘れてはいけません。お子さんやお孫さんがいらっしゃる場合、適切なタイミングで話をすることが大切です。隠し事をするのではなく、正直に、でも丁寧に伝える。家族の理解があれば、関係はより安定したものになります。

もう一つ、覚えておいてほしいことがあります。それは、「過去を否定する必要はない」ということです。

もしあなたが、亡くなった配偶者のことを今でも大切に思っているなら、それは素晴らしいことです。新しい恋愛は、過去への裏切りではありません。むしろ、人生を豊かにするための新しい一歩なのです。

ある男性が、こんなことを言っていました。「亡くなった妻は、私の人生の一部です。でも、人生はまだ続いています。妻も、私が幸せになることを望んでいると思います。だから、新しい恋愛をすることに、罪悪感を感じる必要はないと気づきました」

その通りなのです。過去を大切にしながら、未来に向かって歩いていく。それが、成熟した大人の生き方なのです。

職場恋愛には時間がかかります。でも、それは悪いことではありません。むしろ、あなたが真剣に、責任を持って、相手と向き合っている証拠なのです。

若い頃のような、勢いだけの恋愛は必要ありません。今のあなたには、長年の人生経験があります。相手を見る目があります。そして、本当に大切なものを見極める力があります。