シニアからのはるめくせかい

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過去の恋に心が戻ってしまう、その気持ちを抱きしめて——人生の後半だからこそ知っておきたい、執着との向き合い方

窓の外を眺めながら、ふと昔の恋人の顔が浮かんでくる。そんな経験、ありませんか。

若い頃に別れた人、結婚前にお付き合いしていた人、あるいは配偶者と出会う前に深く愛した人。時が経てば忘れるはずなのに、なぜか心の奥底でずっと気になっている。スマートフォンでSNSを見ていると、ついその人の名前を検索してしまう。「今、どうしているんだろう」って。

60代、70代、80代——人生の後半を迎えた今だからこそ、過去の恋愛が急に鮮明に蘇ってくることがあるんです。それは決して恥ずかしいことでも、おかしなことでもありません。むしろ、長く生きてきたからこその、心の動きなんですね。

今日は、元彼や過去の恋愛に心が引っ張られてしまう、その気持ちについて、優しくお話ししていきたいと思います。同じような思いを抱えている方、あるいは娘さんやお孫さんが執着で悩んでいる方にも、きっと何か届くものがあるはずです。

人生の黄昏時に、なぜ昔の恋が蘇るのか

まず知っておいていただきたいのは、シニア世代の方々が過去の恋愛を思い出すのには、特別な理由があるということです。

配偶者と長年連れ添ってきた方が、パートナーを亡くされた後、ふと若い頃の恋人を思い出す。これは本当によくあることなんです。寂しさの中で、心が自然と「あの頃の温かさ」を求めてしまうんですね。

ある70代の女性から聞いた話が印象的でした。彼女は夫と50年近く添い遂げ、3年前に看取られたそうです。「主人との生活は幸せでした。でも主人が亡くなってから、なぜか18歳の頃に付き合っていた初恋の人のことばかり思い出すんです」と、少し困ったような、でもどこか懐かしそうな表情で語ってくれました。

「主人を裏切っているみたいで、罪悪感もあります。でも夜一人でいると、あの頃のドキドキした気持ちが蘇ってきて。もし違う人生を選んでいたら、どうなっていたんだろうって考えてしまうんです」

彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいました。この涙は、悲しみだけじゃない。懐かしさと、寂しさと、そしてほんの少しの後悔が混ざった、複雑な感情の表れなんだと思います。

「あの時の私」が愛おしくて仕方ない

シニアの方が過去の恋愛に執着してしまう理由の一つに、「あの頃の自分」への憧れがあります。

若くて、輝いていて、未来が無限に広がっていた頃。恋をして、胸がときめいて、世界が色づいて見えた頃。そんな「かつての自分」を、無意識に求めてしまうんですね。

考えてみれば、私たちは人生の大半を、誰かのために生きてきたのかもしれません。子育てに、家事に、仕事に、親の介護に。気づけば、自分の気持ちよりも他人を優先する日々が何十年も続いていた。

そして、子どもたちが独立し、配偶者との関係も落ち着き、ふと立ち止まったとき。「私、本当はどうしたかったんだろう」「あの時、違う選択をしていたら」と、過去を振り返るようになる。それが、昔の恋人への執着という形で現れることがあるんです。

別の女性は、こう打ち明けてくれました。「娘が結婚して孫もできて、私の役目は一段落したんです。でもそうしたら、急に時間ができて。何をしたらいいか分からなくて、スマホで昔の恋人の名前を検索している自分がいました」

彼女は恥ずかしそうに笑いながら、「おばあちゃんのくせに、情けないですよね」と言いました。でも私は思うんです。情けなくなんかない。それは、自分自身と向き合おうとしている証拠なんだって。

SNSが繋いだ、50年ぶりの再会——その光と影

ここで、少し面白い話をさせてください。

最近、同窓会をきっかけにSNSで昔のクラスメイトと繋がるシニアの方が増えていますよね。そして中には、学生時代に好きだった人と、50年、60年ぶりに連絡を取り合うようになった方もいらっしゃいます。

ある男性の話なんですが、彼は75歳で妻と死別し、寂しさの中で高校の同窓会グループに参加したそうです。そこで、高校時代に片想いしていた女性と再会。彼女も夫を亡くしていて、二人はメッセージのやり取りを始めました。

最初は「元気にしてた?」という軽い挨拶だったのが、だんだん毎日のやり取りになり、気づけば彼は朝起きてから夜寝るまで、彼女のことばかり考えるようになっていたそうです。

「まるで高校生に戻ったみたいでした」と彼は笑います。「でも、会ってみたら現実は違った。お互い75歳のおじいちゃんとおばあちゃんで、若い頃の面影はどこにもなくて。それでも、心だけは昔のままときめいているんです」

この話、切ないけれど、どこか微笑ましくもありますよね。SNSという新しい道具が、シニア世代にも「昔の恋の再燃」という、思いがけない経験をもたらしているんです。

自分の価値を、相手に委ねてしまう危うさ

さて、ここからは少し真面目な話をさせてください。

過去の恋愛への執着が強くなりすぎると、今の人生が見えなくなってしまうことがあります。特に気をつけたいのは、「あの人がいた頃の自分が、一番価値があった」と思い込んでしまうことです。

ある女性は、60代で離婚した後、20代の頃に付き合っていた男性のことが忘れられなくなったそうです。「あの頃の私は、誰かに必要とされていた」「あの人は私を大切にしてくれた」と、過去を美化してしまったんですね。

でも実際には、その恋愛も結局は別れていて、当時は辛い思いもたくさんしていたはず。それなのに、時間が経つと良い思い出だけが残って、まるで完璧な恋だったかのように感じてしまう。これが、執着の怖いところなんです。

彼女は毎日、その男性のSNSをチェックし、彼が他の女性と仲良さそうにしている写真を見ては落ち込み、でもまた見てしまう。そんな日々を1年以上続けたそうです。

「気づいたら、孫の運動会も、娘の誕生日も、上の空で過ごしていました。大切な今の時間を、全部無駄にしていたんです」と、彼女は悔しそうに語っていました。

この話を聞いて思うのは、執着って、今を生きる力を奪ってしまうということです。過去に縛られることで、目の前にある幸せが見えなくなってしまう。これは本当にもったいないことですよね。

「元彼がいた私」じゃなく、「今の私」を愛する

執着から抜け出すために大切なのは、自分の価値を他人に委ねないことです。

「あの人がいたから幸せだった」ではなく、「私自身に価値がある」と思えること。これは、何歳になっても、人生のどの段階でも大切なことなんです。

ある80代の女性の言葉が、私の心に深く残っています。彼女は50代の頃、離婚して一時期は過去の恋愛に執着していたそうです。でも今は、一人暮らしを楽しみながら、趣味の書道や友人との旅行を満喫している。

「あの頃は、誰かに愛されることが自分の価値だと思っていました。でも違うんですよね。自分で自分を大切にできて初めて、他人とも良い関係が築けるんだって、80歳にしてやっと分かりました」

彼女の顔は、本当に穏やかで幸せそうでした。皺の一本一本に、人生の深みが刻まれている。そんな印象を受けたんです。

娘や孫が執着で苦しんでいるとき、どう寄り添うか

ここまでは、ご自身が執着で悩んでいる方に向けてお話ししてきました。でも、娘さんやお孫さんが元彼に執着していて、心配されている方も多いのではないでしょうか。

若い世代は、SNSで元彼の近況が簡単に分かってしまうため、余計に執着しやすい環境にあります。昔の私たちは、別れたら相手の消息なんて分からなかったけれど、今は指一本で全部見えてしまう。これは本当に辛いことだと思います。

ある方から、こんな相談を受けたことがあります。「30代の娘が、3年も前に別れた男性のことを引きずっていて。SNSばかり見て、新しい出会いにも目を向けない。どう声をかけたらいいでしょうか」

こういうとき、つい「いつまでもそんなこと考えてないで、前を向きなさい」と言いたくなりますよね。でも、頭ごなしに否定されると、人は余計に殻に閉じこもってしまうものです。

私がお勧めしたのは、まず娘さんの気持ちを受け止めることでした。「辛いよね」「好きだったんだもんね」と、その感情を否定せずに聞いてあげる。そして、自分自身の経験も少しだけ話してみる。

「お母さんも昔、別れた人のことをずっと引きずってたよ」「でもね、時間が解決してくれたの」という風に。説教ではなく、人生の先輩としての経験を、そっと伝えてあげるんです。

その方は後日、「娘と久しぶりにゆっくり話せました。私の若い頃の恋愛話をしたら、娘も少し気持ちが楽になったみたいです」と報告してくれました。世代を超えて、女性同士だからこそ分かり合える部分があるんですよね。

思い出は大切に、でも今を生きる

執着と向き合うとき、過去の恋愛を全否定する必要はないと思います。

あの頃の恋も、あの時の感情も、全部あなたの人生の一部です。楽しかった思い出は、宝物として心にしまっておけばいい。でも、それに縛られて今が見えなくなってしまうのは、やっぱり寂しいことです。

ある女性は、こんな方法で執着から抜け出したそうです。元彼からもらったプレゼントや写真を全部、きれいな箱に入れて、押し入れの奥にしまったんだそうです。「捨てるんじゃなくて、大切に保管する。でも、毎日見るのはやめる」と決めたんですね。

そして、その代わりに新しいことを始めました。ずっとやりたかった陶芸教室に通い始めたんです。最初は、作業中も元彼のことを考えていたそうですが、だんだん粘土をこねることに集中できるようになり、気づけば元彼のことを思い出す時間が減っていった。

「完全に忘れたわけじゃないんです。でも、あの人のことを考える時間より、今の自分のために使う時間のほうが、ずっと多くなりました」と、彼女は晴れやかな顔で語ってくれました。

人生の後半だからこそ見える、本当の幸せ

60代、70代、80代——この年齢になると、残された時間が見えてきます。だからこそ、過去に囚われている暇はないんですよね。

でも同時に、この年齢だからこそ見える景色もあります。若い頃は分からなかった、本当の幸せの形。相手に依存するのではなく、お互いを尊重し合える関係の大切さ。一人でいることの豊かさ。

過去の恋愛に執着してしまうのは、「あの頃に戻りたい」という願いの表れかもしれません。でも、本当に戻りたいのは、あの人のもとではなく、「可能性に満ちた未来を信じられた、あの頃の自分」なのかもしれませんね。

それならば、今からでも遅くはありません。今日から、新しい可能性を信じてみる。小さなことでもいい、何か始めてみる。孫と遊ぶ時間を増やす、長年放置していた趣味を再開する、近所の人との交流を深める。

そうやって「今」を大切に生きていくことで、過去への執着は少しずつ薄れていきます。そして気づくんです。今の自分も、十分に魅力的で、価値があるんだって。