シニアからのはるめくせかい

年齢を重ねた今だからこそときめきはるめく!毎日が楽しくなるシニアのための悠々自適生活応援マガジンです

収入格差を乗り越えて築く、シニア世代のパートナーシップ

桜が満開になったある春の日、近所の公園のベンチに座りながら、私は一組の年配のご夫婦を見かけました。おそらく70代でしょうか。奥様が小さな手提げ袋から水筒を取り出し、ご主人にお茶を注いでいる姿が、なんとも微笑ましく映りました。そんな光景を眺めながら、ふと思ったのです。人生の後半戦において、愛する人と共に歩むということは、若い頃とはまた違った深い意味を持つのではないかと。

私たち世代が新しいパートナーシップを築こうとする時、必ずといっていいほど話題に上がるのが経済的な問題です。定年退職を迎えたり、年金生活に入ったりと、収入状況が大きく変わる時期だからこそ、お金の話は避けて通れません。でも、多くの方が「お金の話をするなんて」と気後れしてしまうのも事実です。

そんな中で、最近私の周りでも珍しくなくなったのが、シニア世代での再婚や事実婚、そして同居という選択です。子育てが終わり、配偶者を亡くされた方、あるいは熟年離婚を経験された方が、人生の残り時間を誰かと共に過ごしたいと願うのは、とても自然なことだと思います。

収入の違いが生む複雑な心境

先日、地域の集まりで知り合った女性から、こんな相談を受けました。60代後半の彼女は、5年前にご主人を亡くされ、最近になって同年代の男性との交際が始まったそうです。お互いに再婚は考えていないものの、一緒に暮らすことを検討しているとのこと。

ただ、そこに一つの悩みがありました。彼女の年金は月額12万円程度。一方、お相手の男性は元会社員で、厚生年金も含めて月額25万円ほどの収入があるそうです。「一緒に暮らすなら生活費は平等に」と考えていた彼女でしたが、いざ具体的な金額を計算してみると、自分の負担が重すぎることに気づいたのです。

彼女の心の中には、複雑な感情が渦巻いていました。「私だけがこんなに苦しい思いをして、彼は余裕があるなんて不公平じゃない」という怒りと、「でも彼に頼ってばかりいるのも申し訳ない」という遠慮の気持ち。そして何より、「この歳になってお金のことで悩むなんて情けない」という自己嫌悪。

私はその話を聞きながら、昔の自分を思い出していました。実は私自身も、似たような経験があるのです。主人が亡くなった後、しばらくして知り合った男性との関係で、同じような悩みを抱えたことがありました。その時の気持ちの複雑さといったら、今でもはっきりと覚えています。

年金制度の違いが生む現実的な格差

私たちシニア世代の収入格差には、実は深い背景があります。特に女性の場合、専業主婦として家庭を支えてきた方も多く、国民年金だけという状況の方が少なくありません。一方、男性は長年会社勤めをされていた方が多いため、厚生年金を受給されている方が多いのが現実です。

これは決して個人の努力不足ではなく、私たちが生きてきた時代の社会構造によるものです。「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という価値観が一般的だった時代に、私たちは人生の大半を過ごしてきました。その結果として生まれた収入格差に、今になって直面しているのです。

このことを理解せずに、単純に「平等に負担しましょう」と言ってしまうのは、あまりにも現実を見ていない考え方だと思います。まるで、身長の違う二人に同じ高さの台に立たせて、「さあ、これで平等です」と言っているようなものではないでしょうか。

そんな状況を踏まえて、私たちシニア世代がパートナーシップを築く際に大切なのは、お互いの現実を受け入れることから始めることだと思います。

実際の生活費分担の工夫とその心理

私が知る限りでも、シニア世代のカップルの生活費分担方法は実に様々です。ある70代のご夫婦は、再婚時に「収入に応じた分担」を選択されました。ご主人の年金が月22万円、奥様が月10万円という状況で、生活費を約7対3の割合で負担されています。

最初は奥様が「申し訳ない」という気持ちを強く持たれていたそうですが、ご主人が「君がいてくれるだけで十分だよ。お金のことは気にしないで」と言ってくださったことで、心の重荷が軽くなったそうです。今では、「私は家事を多めに担当して、彼にはゆっくりしてもらっている」と、役割分担で心のバランスを取られています。

また、別のカップルでは「項目別分担」という方法を取られています。家賃や光熱費など固定費は収入の多い方が担当し、食費や日用品費など変動費をもう一方が担当するという具合です。この方法の良いところは、それぞれが家計に貢献している実感を得やすいことです。

ただし、この項目別分担には思わぬ落とし穴もありました。ある女性の場合、食費を担当することになったのですが、相手の男性が食にこだわりが強く、質の良い食材を求める方だったのです。結果として、彼女の負担額が当初の予想を大幅に上回ってしまい、ストレスを感じることになったそうです。

このエピソードから学べるのは、分担方法を決める際には、お互いの生活スタイルや価値観も十分に話し合っておく必要があるということです。

心を開く勇気とコミュニケーションの大切さ

私たちシニア世代にとって、お金の話をするのは簡単なことではありません。特に女性の場合、「お金にがつがつしていると思われたくない」「品がないと思われるのではないか」という心配から、なかなか率直に話せない方も多いのではないでしょうか。

でも、人生経験を重ねてきた私たちだからこそ、建前ではなく本音で向き合うことができるはずです。若い頃のように「愛があればお金なんて」と言っていられる状況ではありません。限られた収入の中で、お互いが安心して暮らしていけるかどうかは、関係を続けていく上での重要な基盤になります。

先ほどお話しした女性も、最初は遠回しにお金の話をしていたそうです。「もしかしたら、私の負担が重くなるかもしれません」「ご迷惑をおかけするかもしれませんが」といった具合に。でも、お相手の男性から「はっきりと話してください。私たちの年齢なら、現実的に考えることが大切です」と言われて、ようやく具体的な数字を出して話し合うことができたそうです。

その結果、男性の方から「僕が多めに負担するから、君は安心して一緒にいてほしい」と提案があり、二人の関係はより深まったとのことでした。正直なコミュニケーションが、結果的に信頼関係を強化したという素晴らしい例だと思います。

ここで少し余談になりますが、私の知人に面白いエピソードがあります。75歳の男性が65歳の女性とお付き合いされていた時のこと。生活費の話し合いをする際に、男性が「君の年金額はいくら?」と聞いたところ、女性が「女性に年の話と収入の話をするなんて失礼よ!」と怒ってしまったそうです。結局、その関係はうまくいかなかったのですが、後から考えると「現実的な話ができない関係では、一緒に生活するのは難しかっただろう」と男性は振り返っておられました。確かにデリケートな話題ではありますが、避けては通れない現実でもあるのです。

お金以外の価値を見つめ直す

収入格差があるカップルにとって大切なのは、お金以外の部分で互いの価値を認め合うことだと思います。これは私たちシニア世代だからこそできることかもしれません。若い頃は将来性や稼ぐ力が重要視されがちですが、人生の後半戦では違った価値観で相手を見ることができます。

例えば、収入は少ないけれど料理が上手で、毎日美味しい手作りの食事を作ってくれる。病気の時に優しく看病してくれる。一緒にいるだけで心が安らぐ。こういった目に見えない価値は、お金には換算できない大切なものです。

私の友人の80歳の男性は、10歳年下の女性と一緒に暮らしています。彼女の年金は月8万円ほどと少ないのですが、家事全般を担当してくれることで、彼は「家政婦さんを雇ったら月10万円はかかるし、それ以上に心の支えになってくれている」と話しています。お金の計算だけでは測れない価値を、お互いが理解し合っているからこそ、うまくいっているのだと思います。

また、別の視点として、健康面での支え合いも重要な要素です。私たちの年代になると、体調不良や病気のリスクが高まります。そんな時にそばにいてくれる人の存在は、まさにお金では買えない価値があります。

実際、ある女性は「彼の収入の方が多いけれど、私が体調管理や薬の管理をしっかりやることで、医療費の節約にもなっているし、彼の健康維持に貢献している」と話されていました。このように、直接的なお金の負担以外の部分で、関係性のバランスを取ることもできるのです。

住まいの選択肢と工夫

同居を考える際、住まいをどうするかも重要な問題です。どちらかの家に住むのか、新しく家を借りるのか、購入するのか。それぞれにメリットとデメリットがあります。

例えば、男性の持ち家に女性が引っ越す場合。家賃負担がないため経済的にはメリットがありますが、女性側としては「居候のような気持ちになってしまう」「この家での立場が不安定に感じる」という心理的な負担を感じることがあります。

逆に、新しく賃貸住宅を借りる場合は、お互いが対等な立場で新生活をスタートできますが、家賃という新たな負担が生まれます。年金収入を考えると、この負担は決して軽いものではありません。

こうした問題に対して、最近では「お試し同居」をするカップルも増えています。まず数ヶ月間、週の半分程度をどちらかの家で過ごしてみる。その間の食費や光熱費の増加分をどう負担するかを話し合い、本格的な同居に向けた準備期間とするのです。

ある68歳の女性は、「最初は彼の家で週3日過ごしてみました。その間の食材費や光熱費の一部を私が負担することで、お互いの負担感を確認できました」と話されています。この方法なら、経済的な負担も段階的に調整できますし、実際の生活感も掴めるため、とても現実的な選択だと思います。

心の準備と家族への配慮

シニア世代でのパートナーシップにおいては、経済的な問題以外にも配慮すべき点があります。特に、それぞれの子供たちや親族との関係です。

収入格差のあるカップルの場合、周囲から「お金目当てではないか」という心ない言葉をかけられることもあります。特に、収入の少ない側がそのような疑いの目を向けられることが多く、精神的な負担となってしまいます。

私の知人の女性は、「息子から『その人はお母さんの年金が目当てじゃないの?』と言われて、とてもショックでした。でも、よく考えてみれば、息子なりに私のことを心配してくれているのだと理解できました」と話されていました。

このような状況に対処するためには、家族に対してもオープンなコミュニケーションが大切です。お金の話を含めて、どのような関係性を築こうとしているのかを説明することで、理解を得やすくなります。

また、万が一の場合の財産分与や相続についても、事前に話し合っておくことが重要です。これは決して縁起でもない話ではなく、お互いの子供たちの将来にも関わる現実的な問題だからです。

生活の質を保ちながら節約する知恵

限られた収入の中で二人が快適に暮らすためには、生活の質を落とすことなく支出を抑える工夫も必要です。私たちシニア世代には、長年培ってきた生活の知恵があります。その経験を活かして、無理のない節約生活を送ることができるのです。

例えば、食材の買い物では、見切り品や特売日を狙った計画的な買い物。保存の利く食材をまとめて調理して冷凍保存するなど、手間をかけることで食費を抑えることができます。また、野菜作りが好きな方なら、ベランダや小さな庭でハーブや野菜を育てることで、食費の節約と趣味を両立できます。

光熱費についても、二人で住むことで一人暮らしの時よりも効率的になる面があります。暖房や冷房を一緒に使えば、一人当たりの負担は軽くなります。また、お互いに「もったいない」という感覚を共有していれば、自然と節約意識も高まります。

娯楽費についても、シニア割引を活用したり、図書館や公民館のイベントに参加したりすることで、お金をかけずに楽しい時間を過ごすことができます。映画館のシニア料金、美術館の割引制度、温泉施設の平日料金など、私たちの年代だからこそ利用できる特典も数多くあります。

健康への投資と医療費の考え方

シニア世代にとって避けられないのが、健康面での支出です。定期的な病院通い、薬代、サプリメント代など、若い頃にはあまり気にしなかった出費が増えてきます。

しかし、この健康への投資は、二人で支え合うことで効率化できる面もあります。例えば、お互いの服薬管理を手伝うことで飲み忘れを防ぎ、結果的に体調不良による医療費増加を避けることができます。また、規則正しい生活や栄養バランスの取れた食事を二人で心がけることで、病気の予防にもつながります。

ある75歳のご夫婦は、「一人だった時は食事が適当になりがちでしたが、二人になってからは栄養のことを考えて食事を作るようになり、健康状態が良くなりました」と話されています。医療費の節約という観点からも、パートナーがいることのメリットは大きいのです。