人生の後半を迎えた今、ふと立ち止まって考えることはありませんか。「自分の人生、これでよかったのだろうか」「まだ何か足りない気がする」そんな思いを抱えている方、実は多いのではないでしょうか。
今日お話ししたいのは、シニア期の男性が時に陥ってしまう複雑な人間関係についてです。決して他人事ではない、私たちの心の奥底にある本音と向き合うお話です。
なぜ心が揺れるのか、その理由を知ることから
定年退職を迎えた後、あるいは子どもたちが独立した後、急に心にぽっかりと穴が開いたような感覚を覚えたことはありませんか。
会社では部長だった、課長だった。家では父親として、一家の大黒柱として頼られていた。そういう役割が、ある日突然なくなってしまう。これは想像以上につらいことなんですよね。
朝起きても行く場所がない。家にいても、妻は妻で長年培ってきた自分の生活リズムがある。「お父さん、そこにいないで」なんて言われてしまうこともある。自分の居場所がないような、そんな寂しさを感じている方、きっといらっしゃるのではないでしょうか。
そんな時、偶然出会った女性から「あなたのお話、とても面白いわ」「そんな経験をされてきたんですね、素敵」なんて言われたら、どうでしょう。久しぶりに自分が認められた気がして、心が温かくなるのも無理はありません。
心の隙間を埋めようとする、その気持ち
68歳の男性の話を聞いたことがあります。彼は大手企業で長年働いて、定年退職しました。奥さまとは45年連れ添っていましたが、会話といえば「今日の晩ごはん何?」「病院の予約は何時?」といった日常的なことばかり。
ある日、地域の趣味の会で出会った63歳の女性が、彼の昔の仕事の話に興味津々で耳を傾けてくれたそうです。「そんなプロジェクトを任されていたなんて、すごいですね」と目を輝かせて聞いてくれる。
彼は思いました。「ああ、自分にもまだ価値があるんだ」と。
その気持ち、本当によくわかります。誰だって、自分を必要としてくれる人がいることを実感したいものです。認められたい、大切にされたい。それは人間として当然の欲求なんです。
でも、ここで立ち止まって考えてほしいんです
その新しい出会いに心が動いて、会う回数が増えていく。奥さまには内緒で、密かに会うようになる。そうすると、だんだん罪悪感と高揚感が入り混じった複雑な気持ちになっていきます。
72歳の別の男性は、こんなことを話してくださいました。
奥さまが要介護状態になり、10年間介護を続けていた彼。週に2回来てくださるヘルパーさんの明るい笑顔と優しい言葉が、どれだけ救いになったことか。「いつも頑張っていらっしゃいますね」その一言で、介護の疲れが吹き飛ぶような気がしたそうです。
やがて、ヘルパーさんへの感謝の気持ちが、いつしか別の感情に変わっていきました。相手も彼の優しさに惹かれていったようです。
でも彼はこう言いました。「妻は私が支えなければ生きていけない。若い頃から一緒に歩んできた妻を裏切るようなことはできない。でも、ヘルパーさんのことも大切に思っている。自分はどうすればいいんだろう」
その苦しみ、痛いほど伝わってきます。
ちょっと面白いエピソードを挟ませてください
ここで少し明るい話を。私の知り合いの75歳の男性は、定年後に俳句の会に入りました。そこで出会った70歳の女性と意気投合して、よく句会の後にお茶を飲みに行くようになったそうです。
奥さまには内緒にしていたのですが、ある日バレてしまいました。どうやってバレたかというと、なんと俳句の雑誌に二人の句が並んで掲載されて、それを奥さまが見つけたんです。
奥さま、カンカンに怒るかと思いきや、「あら、あなたこんなに上手な俳句を作れるようになったの? その先生、いい方なのね。今度一緒に挨拶に行きましょう」と言ったそうです。
結局その男性、奥さまと一緒に句会に通うようになって、今では三人で仲良く俳句を楽しんでいるんだとか。「変な気を起こさなくてよかった」と笑っていましたよ。
でも、多くの場合はこんなに簡単には解決しません
長年連れ添った配偶者がいながら、新しい関係を持ってしまう。これは本当に苦しい状況です。
どちらも大切。どちらも失いたくない。でも、このままでは誰かが傷つく。自分も苦しい。
70歳の男性の話も聞きました。3年前に最愛の奥さまを亡くし、悲しみから立ち直ろうと始めた社交ダンス。そこで二人の女性と親しくなりました。
一人は亡くなった奥さまに雰囲気が似ていて、一緒にいると安心する。もう一人は奥さまとは正反対の性格で、新しい刺激をくれる。どちらとも深い関係になり、どちらも手放せなくなってしまった。
「二人とも大切なんです。でも、こんな状態が続けられるわけがない。選ばなければならないのはわかっている。でも選べない」
彼の目には涙が浮かんでいました。
なぜこんなことになってしまうのでしょう
考えてみると、私たちシニア世代の男性は、人生の大きな転換期にいるんですよね。
体力は以前ほどではない。でも、まだまだ元気でいたい。自分の魅力を確かめたい。「まだ自分は男として魅力的なんだ」と証明したいという気持ち。これは決して悪いことではありません。
でも、その証明の仕方を間違えてしまうと、大切な人たちを傷つけることになってしまうんです。
経済的に余裕がある。時間もある。だからこそ、複数の関係を維持できてしまう。でもそれは、本当の幸せなのでしょうか。
罪悪感に苛まれながら、嘘をつき続ける日々。いつバレるかとビクビクしながら過ごす毎日。健康にも良くありません。実際、ストレスで血圧が上がったり、不眠に悩まされたりする方も多いんです。
では、どうすればいいのでしょうか
まず大切なのは、自分の心と向き合うことです。
「なぜ自分はこんな状況を求めているんだろう」
その答えは、きっと寂しさだったり、認められたいという欲求だったり、自分の価値を確認したいという気持ちだったりするはずです。
でも、それは本当に複数の恋愛関係でしか満たせないものでしょうか。
別の方法はないでしょうか。
たとえば、長年連れ添った奥さまと、改めて向き合ってみる。「実は最近、寂しい気持ちがあるんだ」と正直に話してみる。驚くほど、奥さまも同じ気持ちを抱えているかもしれません。
一緒に新しい趣味を始めてみる。旅行に行ってみる。若い頃のように、二人で話す時間を作ってみる。
もし奥さまを亡くされた方なら、新しい出会いを大切に育てていく。でも一人の方と誠実に向き合う。複数の関係を持つのではなく、一つの関係に集中する。
自分の価値は、誰かに愛されることだけで証明されるものではありません。
地域のボランティア活動に参加する。若い世代に自分の経験を伝える。趣味を深める。そういった活動の中で、自分の居場所を見つけることもできるんです。
誠実であること、それが一番大切
65歳のある男性が、こんなことを話してくださいました。
一時期、妻以外の女性と親しくなりかけたそうです。でも、ある日ふと思ったんだそうです。
「自分は今まで、正直に生きてきたつもりだ。仕事でも、家庭でも、嘘をつかずに生きてきた。今更、人生の最後の方で嘘をつきながら生きるなんて、自分らしくない」
それで、その女性とは友人として距離を保つことにして、妻に正直に話したそうです。「最近、寂しい気持ちがあって、他の人に心が動きかけた。でも、やっぱりあなたと最後まで一緒にいたい」と。
奥さまは最初怒ったそうですが、正直に話してくれたことを評価してくれて、二人で関係を見つめ直すきっかけになったそうです。
「今は妻とまた、新婚時代のように仲良くしています。あの時、正直でいてよかった」
彼の顔は、とても穏やかでした。
人生の後半、どう生きるか
私たちに残された時間は、決して無限ではありません。だからこそ、その時間をどう使うか、誰と過ごすか、とても大切なんです。
複雑な関係の中で悩み苦しむのではなく、誠実な関係の中で穏やかに過ごす。
自分の価値を、他人からの承認だけに求めるのではなく、自分自身の内面から見出す。
長年連れ添った配偶者との関係を、もう一度大切に育て直してみる。
もし新しい出会いがあるなら、誠実に一人の人と向き合う。
それが、人生の最終章を美しく生きる方法ではないでしょうか。
もし今、複雑な関係に悩んでいるなら
正直に言います。今すぐ全てを解決するのは難しいかもしれません。
でも、一歩ずつでいいんです。
まず、専門家に相談してみる。カウンセラーや、信頼できる友人に話を聞いてもらう。自分一人で抱え込まないことが大切です。
そして、自分が本当に求めているものは何か、じっくり考えてみる。
関係者全員のことを考えてみる。妻は? 相手の女性は? 子どもたちは? 孫たちは? みんなにとって、本当に良い選択は何か。
決断するのは怖いかもしれません。でも、曖昧な状態を続けることは、結局誰も幸せにしないんです。
勇気を持って、正直になる。それが、あなたらしく生きる第一歩です。
これからの人生を、もっと良いものに
人生の後半だからこそ、できることがあります。
今まで積み重ねてきた経験や知恵を活かして、誰かの役に立つこともできます。
趣味を深めて、新しい仲間と健全な友情を育むこともできます。
配偶者と改めて向き合って、残りの人生を二人で大切に過ごすこともできます。
一人の方と誠実な新しい関係を築くこともできます。
自分自身と向き合って、内面の豊かさを育てることもできます。
選択肢はたくさんあるんです。ただ、その中で一番大切なのは「誠実であること」です。