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シニアが知るべき言葉の傷と心理|人間関係を良好に保つ秘訣

長い人生を歩んでこられた皆さんなら、きっと一度は経験があるのではないでしょうか。家族や友人、あるいは知り合いから、なぜかわざと嫌な言い方をされて、心がチクリと痛んだこと。あるいは、ご自身が何気なく発した言葉が、相手を傷つけてしまったかもしれないと、後から気づいて後悔したこと。

私たちは年齢を重ねるほど、人との関わりの中で多くの経験を積んできました。でも、不思議なことに、何十年も生きてきても、言葉のすれ違いやコミュニケーションの難しさは、なくなることがないんですよね。むしろ、定年後の時間が増えた今、配偶者や家族、友人との時間が長くなったことで、言葉の持つ重みを改めて感じている方も多いのではないでしょうか。

今日は、なぜ人はわざと嫌な言い方をしてしまうのか、その心理について、一緒に考えていきたいと思います。そして、これからの人生をより豊かに、温かい人間関係の中で過ごすためのヒントを見つけていきましょう。

定年後に増える夫婦の言葉の衝突

まず、多くのシニアの方が直面する場面として、定年退職後の夫婦関係があります。長年、外で働いていた夫が家にいる時間が増えると、妻との間で言葉の摩擦が生まれやすくなるんですよね。

ある70代の女性の話です。夫が定年退職してから、家事のやり方について細かく口を出すようになったそうです。「そんなやり方じゃダメだよ」「もっと効率的にできるだろう」といった言い方で、彼女が何十年も続けてきた家事の方法を否定するような発言が増えました。

彼女は最初、「長年外で働いてきた疲れから、イライラしているのかな」と我慢していましたが、次第に「私のやり方のどこが悪いの?」という怒りと悲しみが込み上げてきました。ある日、思い切って「あなたのその言い方、とても傷つくのよ」と伝えたところ、夫は驚いた様子でこう答えたそうです。「え、俺はただアドバイスしているつもりだったんだけど…」

この夫は、決して妻を傷つけたくて嫌な言い方をしていたわけではありませんでした。実は、定年後の自分の居場所を探していて、何か役に立ちたい、自分の存在価値を示したいという気持ちから、つい上から目線の言い方になってしまっていたのです。

自己防衛という心の鎧

人がわざと嫌な言い方をする背景には、様々な心理が隠れています。その一つが「自己防衛」です。

私たちシニア世代は、人生の中で様々な挫折や失敗、時には裏切りや別れを経験してきました。そうした経験が積み重なると、心の奥底に「また傷つきたくない」という恐れが芽生えることがあります。その恐れから身を守るために、相手より先に攻撃的な態度を取ってしまうのです。

ある75歳の男性は、長年の友人との会話で、いつもどこか皮肉めいた言い方をしてしまうと悩んでいました。友人が「最近、孫が遊びに来てね」と嬉しそうに話しても、「いいね、うちは来ないけど」とわざと暗い返事をしてしまう。友人が趣味の話をすれば、「そんなの、お金の無駄じゃない?」と否定的な言葉を返してしまう。

彼は自分でも、なぜこんな言い方をしてしまうのか分からずにいました。でも、よくよく考えてみると、自分は子供たちとの関係があまりうまくいっておらず、孫にもあまり会えない寂しさを抱えていました。友人の幸せそうな話を聞くと、自分の寂しさや劣等感が刺激されて、つい嫌な言い方で自分の心を守ろうとしていたのです。

この心理、実は多くの方が持っているものなんですよね。年齢を重ねると、できないことが増えたり、健康面での不安が出てきたり、大切な人を失ったりする経験が増えます。そうした喪失感や不安から、無意識のうちに自分を守ろうとして、相手に対して攻撃的な言葉を使ってしまうことがあるのです。

愛情の裏返しという複雑な心

もう一つ、興味深い心理が「愛情の裏返し」です。これは若い人だけでなく、私たちシニアにも当てはまることがあります。

ある68歳の女性は、孫に対してついつい厳しい言い方をしてしまうと悩んでいました。「そんな姿勢で食事しちゃダメでしょ」「スマホばかり見て、目が悪くなるわよ」と、会うたびに注意ばかり。孫は次第に彼女を避けるようになり、彼女自身も「また孫に嫌われちゃった」と悲しんでいました。

でも、彼女の心の中には、孫への深い愛情がありました。「きちんとした子に育ってほしい」「将来困らないようにしてあげたい」という思いが強すぎて、つい厳しい言い方になってしまっていたのです。本当は「大好きだよ」「元気に育ってくれて嬉しいよ」と伝えたいのに、それを素直に言葉にできず、注意や小言という形でしか表現できなくなっていました。

私たちの世代は、特に「愛情を言葉で表現する」ことに慣れていない方が多いかもしれません。昔は「愛してる」なんて言葉、夫婦の間でも恥ずかしくて言えなかった。親から「愛してる」と言われた記憶がない方も多いでしょう。だから、大切に思っている相手ほど、素直になれず、つい厳しい言い方をしてしまうことがあるんですよね。

ここで少し余談ですが、昔、私の知り合いのご夫婦の話です。結婚50周年を迎えたとき、子供たちが金婚式のお祝いを企画しました。その席で、普段は無口で厳格な夫が、突然立ち上がって「50年間、ありがとう」と妻に頭を下げたそうです。妻は驚いて「あなた、どうしたの?」と聞くと、夫は「実は、毎日感謝してたんだ。でも言い方が分からなくて、つい文句ばかり言ってしまってた」と涙を浮かべたそうです。その場にいた誰もが涙したという、心温まるエピソードです。

世代間のコミュニケーションギャップ

シニアの方が直面するもう一つの大きな問題が、若い世代とのコミュニケーションギャップです。子供や孫、あるいは若い知人との会話で、言葉の選び方が適切でなかったために、関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。

ある72歳の男性は、娘夫婦との関係に悩んでいました。娘が仕事と子育てで忙しそうにしていると、つい「そんなに無理して働かなくても、旦那さんの給料でやっていけるだろう」と言ってしまう。すると娘は不機嫌になり、「お父さんは私の気持ちを分かってくれない」と距離を置かれてしまいます。

彼は決して娘を責めたいわけではなく、むしろ心配しているからこそ口を出してしまうのです。でも、彼の言い方は、娘の生き方を否定するように聞こえてしまっていました。彼の時代の価値観と、娘の世代の価値観が違うことを理解せず、自分の考えを押し付けるような言い方になっていたのです。

時代は変わり、価値観も変化しています。私たちが若い頃の「当たり前」は、今の若い人たちには通用しないことも多い。でも、つい自分の経験や価値観を基準にして、「こうすべきだ」「それは間違っている」と言ってしまうことがあります。そして、その言い方が相手を傷つけ、関係を悪化させてしまうのです。

体調不良やストレスが言葉に表れる

年齢を重ねると、どうしても体の不調が増えてきます。膝が痛い、腰が重い、夜よく眠れない。そうした体調不良は、私たちの気分や言葉遣いに大きく影響します。

ある69歳の女性は、持病の腰痛がひどくなってから、夫に対してイライラすることが多くなったと言います。「もう、あなたって本当に何もできないのね」「少しは考えて動いてよ」と、以前なら言わなかったような強い言い方をしてしまう。後から「あんな言い方しなければよかった」と後悔するのですが、痛みがあると、どうしても心に余裕がなくなってしまうそうです。

体の不調だけでなく、老後の経済的な不安、健康への心配、孤独感といったストレスも、私たちの言葉を棘だらけにしてしまうことがあります。特に、配偶者や家族といった身近な人に対して、ストレスのはけ口として嫌な言い方をしてしまうケースが多いのです。

友人関係における微妙な言葉の応酬

シニアの友人関係にも、言葉の問題は存在します。長年の付き合いだからこそ、つい遠慮のない言い方をしてしまったり、冗談のつもりが相手を傷つけてしまったりすることがあります。

ある女性グループでの出来事です。月に一度、同級生の女性たちがランチ会を開いています。その中の一人が、いつも他の人の服装や持ち物について、ちくりと刺さるようなコメントをするのです。「あら、その服、お若い感じね」「そのバッグ、ちょっと派手じゃない?」といった具合に。

言われた方は、最初は笑って流していましたが、次第に「また何か言われるんじゃないか」とランチ会が憂鬱になってきました。そして、ある日、思い切って「そういう言い方、ちょっと傷つくのよ」と伝えたところ、その女性は驚いて「え、私、冗談のつもりだったのに…」と答えたそうです。

彼女は、グループの中で自分の存在感を示したい、面白いことを言って盛り上げたいという気持ちから、他の人をいじるような発言をしていました。でも、それが冗談で済む範囲を超えていることに、本人は気づいていなかったのです。

嫌な言い方をされたときの対処法

では、もし誰かからわざと嫌な言い方をされたとき、私たちはどう対応すればいいのでしょうか。

まず大切なのは、相手の言葉に傷ついた自分の気持ちを否定しないことです。「私が気にしすぎなのかな」「我慢しなきゃ」と自分を責める必要はありません。傷ついたという感情は、とても自然で正当なものです。

その上で、可能であれば、相手に自分の気持ちを伝えてみましょう。ただし、感情的に攻撃するのではなく、「私はこう感じた」という形で伝えるのがコツです。「あなたの言い方は間違っている」ではなく、「その言い方をされると、私は悲しい気持ちになるの」という伝え方です。

ある80代の女性は、夫の言い方に長年悩んでいましたが、ある日、静かにこう伝えたそうです。「あなたの言い方が、私をとても寂しい気持ちにさせているの。もう少し優しく話してくれたら嬉しいわ」と。夫は最初、戸惑った様子でしたが、次第に言い方を変える努力をしてくれるようになったそうです。

もし、直接伝えるのが難しい場合は、第三者に相談するのも一つの方法です。信頼できる友人や、地域の相談窓口などに話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなることがあります。

自分が嫌な言い方をしていないか見つめ直す

ここまで、嫌な言い方をされた場合について考えてきましたが、実は私たち自身も、知らず知らずのうちに誰かを傷つけるような言い方をしている可能性があります。これは、とても大切なポイントです。

自分の言葉を振り返ってみましょう。配偶者に対して、子供や孫に対して、友人に対して、どんな言い方をしているでしょうか。「あなたのため」と思って言っている言葉が、実は相手を否定したり、傷つけたりしていないでしょうか。

ある男性は、妻から「あなたはいつも、私の話を否定から入るのね」と言われてハッとしました。確かに、妻が何か提案すると、「でも」「いや」「そうは言っても」と、まず否定的な言葉を返していたことに気づいたのです。彼に悪意はなく、ただ慎重に物事を考える性格だったのですが、その言い方が妻の気持ちを萎えさせていました。

それ以来、彼は意識的に「そうだね」「なるほど」とまず受け止めてから、自分の意見を伝えるように心がけたそうです。すると、夫婦の会話が以前より穏やかで楽しいものになったと言います。

言葉の背景にある心の痛みを理解する

誰かが嫌な言い方をするとき、その背後には必ず理由があります。寂しさ、不安、恐れ、劣等感、疲れ、体調不良…。表面的な言葉だけを見るのではなく、その奥にある心の痛みに気づくことができれば、相手への見方も変わってくるかもしれません。

もちろん、相手の事情を理解したからといって、嫌な言い方を我慢し続ける必要はありません。でも、「この人はなぜこんな言い方をするんだろう」と考えてみることで、単に腹を立てたり傷ついたりするだけでなく、より建設的な対応ができるようになります。

同時に、自分自身が嫌な言い方をしてしまうとき、その背景に何があるのかを見つめることも大切です。「なぜ私は、こんな言い方をしてしまったんだろう」と自問自答することで、自分の本当の気持ちに気づくことができます。

温かい言葉で満たされる老後のために

私たちシニアにとって、残された人生の時間は、若い頃ほど無限ではありません。だからこそ、大切な人たちとの時間を、温かい言葉で満たしていきたいものです。

嫌な言い方をする、あるいは嫌な言い方をされるという経験は、とても辛いものです。でも、それを乗り越えて、お互いに思いやりのある言葉を交わせるようになれば、人間関係はもっと豊かになります。

配偶者との関係、子供や孫との関係、友人との関係。これらすべてが、私たちの老後の幸せを左右します。そして、その関係を良好に保つための最も大切な道具が、言葉なのです。