結婚して何十年も経つと、若い頃のような情熱的な愛情表現は減っていくものです。でも、だからといって愛が消えたわけではありません。むしろ、長い年月を共に過ごしたからこそ、言葉にならない深い愛情が育っているはずです。
そんな愛情を確かめる方法の一つが、「ハグ」なのです。
今日は、シニア世代のハグについて、一緒に考えてみましょう。若い頃とは違う、でも確かに存在する愛情の形。パートナーとの絆を深めるヒント。そして、これからの人生をより豊かにするための、温かいスキンシップの大切さについてお話しします。
若い頃のハグと今のハグ、何が違うのか
思い返してみてください。若い頃、恋人だった頃のハグを。ドキドキして、恥ずかしくて、でも嬉しくて。抱きしめられるたびに、胸が高鳴ったものです。
結婚して、子育てに追われて、仕事に追われて。気づけば、そんなハグをすることも、されることも少なくなっていた。「今さらハグなんて」と思っている方も多いかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。若い頃の情熱的なハグとは違う、もっと深くて温かいハグが、今のあなたたちにはできるはずです。
何十年も一緒に過ごしてきた二人だからこそ、安心感と信頼に満ちたハグができる。言葉がなくても、相手の気持ちがわかる。そんな特別なハグが、熟年夫婦にはあるのです。
シニア世代の本気のハグとは
長年連れ添った夫婦のハグには、若いカップルとは違う深みがあります。ここでは、パートナーがあなたを本当に大切に思っているときのハグの特徴を見ていきましょう。
静かに包み込むような深いハグ
若い頃のように激しくはないかもしれません。でも、ゆっくりと、優しく、全身で包み込むように抱きしめてくれる。これは、長い年月を共に過ごした二人だけが持つ、深い愛情の表れです。
ある70代の女性の話です。夫は定年退職してから、朝起きた時に必ず彼女をそっと抱きしめるようになったそうです。「おはよう」の挨拶代わりに。最初は「急にどうしたの」と戸惑ったそうですが、今ではその朝のハグが一日の始まりの大切な儀式になっています。
夫の腕の中で、彼女は思うのです。「この人と一緒に年を重ねてきて、本当に良かった」と。若い頃には感じられなかった、深い安心感と幸せを、その静かなハグから感じ取っているのです。
長い時間をかけて抱きしめる
若い頃は、短くても強いハグが多かったかもしれません。でも、シニア世代のハグは、時間が違います。
急ぐ必要もない。他に気を取られることもない。ただ、相手の温もりを感じながら、ゆっくりとした時間を過ごす。そんなハグが増えてきたなら、それは二人の関係が成熟している証拠です。
ある夫婦の話があります。妻が大きな手術を受けることになった時、夫は病院のベッドで妻を抱きしめました。何も言わず、ただじっと。その時間は、きっと10分以上は続いたでしょう。
妻の目には涙が浮かんでいました。「この人は、私が怖がっているのをわかってくれている」「言葉はいらない。この腕の中にいれば大丈夫」そう感じたそうです。
手を握りながら、額を合わせるハグ
シニア世代になると、体力的に激しいハグは難しくなることもあります。でも、それでいいのです。
座ったまま、お互いの手を握り合い、額を合わせる。それだけで十分、愛情は伝わります。むしろ、こうした静かで優しいスキンシップこそ、長年の信頼関係があるからこそできることなのです。
80代の男性が語ってくれました。妻が認知症になり、自分のことも分からなくなってしまった。でも、毎日デイサービスから帰ってきた妻の手を握り、額を合わせて「おかえり」と言うと、妻は必ず笑顔を見せてくれる。
「言葉で伝わらなくても、この温もりだけは分かってくれているんだ」と、男性は目を潤ませながら話してくれました。何十年も一緒にいたからこそ、言葉を超えた絆がある。それを実感させてくれるハグです。
ちょっと面白い話ですが、ハグの研究をしている学者によると、20秒以上のハグは「オキシトシン」という幸せホルモンを分泌させるそうです。このホルモンは、ストレスを軽減し、血圧を下げ、免疫力を高める効果があるとか。つまり、シニア世代こそ、健康のためにもハグが必要だということですね。若いカップルが短くて情熱的なハグをする一方で、シニア世代がゆっくりと長いハグをするのは、実は理にかなった健康法だったのかもしれません。医学的に見ても、熟年夫婦のハグは素晴らしいものなんです。
愛情が薄れているときのハグの変化
一方で、長年連れ添った夫婦でも、関係が冷えてしまうことがあります。そんな時、ハグにも変化が現れます。
形だけの義務的なハグ
記念日や誕生日など、「しなければならない」という義務感だけでするハグ。体は触れ合っていても、心は離れている。そんなハグは、かえって寂しさを感じさせます。
ある65歳の女性が話してくれました。結婚記念日、久しぶりに外食に出かけた帰り道、夫が突然「はい、ハグ」と言って抱きしめてきたそうです。でも、その腕には力がなく、すぐに離れてしまった。
「あ、この人は義務でハグしているんだ」と気づいた時、涙が出そうになったと言います。ハグされたのに、むしろ孤独を感じてしまった。形だけのハグは、時に残酷なものです。
避けるようなハグ
以前はもっと親密だったのに、いつの間にか体が触れ合うことを避けるようになる。軽く肩を抱くだけ、すぐに離れてしまう。こうした変化は、関係が冷えているサインかもしれません。
「定年後、夫は私から離れて座るようになった」と70代の女性は言います。以前は隣に座ってテレビを見ていたのに、今は別々のソファ。ハグなんて、もう何年もしていない。
その寂しさを誰にも言えず、一人で抱え込んでいる。そんなシニア女性は、実は少なくないのです。
無関心なハグ
一番辛いのは、無関心なハグかもしれません。抱きしめられても、相手の心がどこか遠くにある。スマホを見ながら、テレビを見ながら、適当に腕を回すだけ。
「私は今、ここにいるのに」という切なさ。長年一緒にいたからこそ、相手の心の状態は手に取るようにわかります。だから、こうした無関心なハグは、心に深く突き刺さるのです。
なぜシニア世代にハグが必要なのか
ここまで読んで、「もう若くないし、今さらハグなんて」と思った方もいるかもしれません。でも、実はシニア世代こそ、ハグが必要なのです。
孤独を防ぐスキンシップの力
定年退職、子どもの独立、友人との別れ。シニア世代は、さまざまな喪失を経験します。そんな中で、パートナーとのスキンシップは、孤独を防ぐ大切な手段なのです。
人間は、肌と肌が触れ合うことで、安心感を得る生き物です。赤ちゃんが母親に抱かれて安心するのと同じように、私たちシニアも、温かい抱擁を必要としています。
言葉が減っても伝わる愛情
年を重ねると、言葉で愛情を表現するのが恥ずかしくなることもあります。「今さら愛してるなんて言えない」という方も多いでしょう。
でも、ハグなら大丈夫です。言葉がなくても、その温もりで愛情は十分に伝わります。「あなたが大切」「一緒にいて幸せ」という気持ちが、抱きしめる腕の力から伝わるのです。
健康にも良い効果
先ほども触れましたが、ハグは健康にも良い影響があります。血圧を下げ、ストレスを軽減し、免疫力を高める。心身ともに健康でいるために、パートナーとのハグは大切な習慣なのです。
ある研究では、週に数回ハグをする夫婦は、そうでない夫婦に比べて、心疾患のリスクが低いという結果も出ています。愛情表現が、そのまま健康につながる。素晴らしいことだと思いませんか。
今からでも遅くない、ハグのある生活を始めるために
「でも、長年ハグなんてしてこなかったのに、今さらどうやって始めればいいの」そんな戸惑いがあるかもしれません。大丈夫です。少しずつ、始めていきましょう。
小さなスキンシップから
いきなりハグは恥ずかしいという方は、小さなスキンシップから始めてみましょう。
朝、おはようと言いながら手を握る。テレビを見ながら、さりげなく肩に手を置く。一緒に散歩する時、腕を組む。こうした小さな触れ合いが、自然とハグへとつながっていきます。
きっかけを作る
「おかえり」のハグ、「おやすみ」のハグ。こうした日常の挨拶に、ハグを組み込んでみるのも良いでしょう。
最初は照れくさいかもしれません。でも、続けていくうちに、それが当たり前の習慣になります。一日の始まりと終わりに、パートナーとハグをする。それだけで、生活に温かみが生まれます。
正直に気持ちを伝える
「最近、寂しい」「もっと触れ合いたい」そんな気持ちを、正直に伝えてみましょう。長年連れ添ったパートナーなら、きっと理解してくれるはずです。
「恥ずかしいかもしれないけど、たまにはハグしてくれない?」そう言葉にするだけで、関係は変わり始めます。相手も同じことを考えていたかもしれません。
パートナーを失った方へ
パートナーを亡くした方も、この記事を読んでいるかもしれません。「もうハグをする相手がいない」という寂しさを抱えながら。
その喪失感は、誰にも計り知れないものでしょう。長年抱きしめ合ってきた相手がいなくなる。その温もりを二度と感じられない。そんな悲しみは、言葉では表せません。
でも、覚えていてください。あなたがパートナーと交わしたすべてのハグは、あなたの心と体に刻まれています。その温もりは、決して消えることはありません。
そして、もし新しい出会いがあったなら。もし再婚を考えているなら。臆せずに、新しいパートナーとのハグを受け入れてください。それは、亡くなったパートナーへの裏切りではありません。あなたが幸せになることを、きっと願っているはずです。
子どもや孫とのハグも大切に
パートナーとのハグだけでなく、子どもや孫とのハグも大切にしましょう。
「孫が生まれてから、娘が私をよくハグしてくれるようになった」という70代の女性がいます。娘も母親になって、親の愛情の深さを実感したのでしょう。そして、感謝の気持ちを込めて、母親を抱きしめる。
孫が小さいうちは、たくさん抱きしめてあげましょう。大きくなってからも、会った時には必ずハグをする。そうした習慣が、家族の絆を強くします。
「おじいちゃん、おばあちゃんのハグは温かくて安心する」と言ってもらえたら、こんなに嬉しいことはありませんよね。