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夫婦の食卓を豊かにする:料理の悩みを愛情で解決する方法

人生を長く歩んでこられた皆様にとって、家庭というものは何よりも大切な安らぎの場所ではないでしょうか。しかし時として、その家庭に小さな問題が生じることがあります。今日は、とてもデリケートながらも現実的な悩みについてお話ししたいと思います。それは「配偶者の料理について困っている」という問題です。

これは決して珍しいことではありません。長年連れ添ったご夫婦でも、また新婚のお二人でも、食事に関する悩みは意外と多いものです。特に男性の方から「妻の料理が口に合わなくて、家に帰るのが億劫になってしまう」という相談をお受けすることがあります。

表面の問題と深層の事情

この問題は、単純に「味が合わない」というだけのことではありません。実は、そこには夫婦間のコミュニケーションや相互理解、そして役割に対する期待など、複雑な要素が絡み合っているのです。人生経験豊富な皆様なら、きっとおわかりいただけるでしょう。表面に現れている問題の奥には、もっと深い事情があることが多いものです。

まず理解していただきたいのは、「まずい料理」という結果の背景には、さまざまな事情が隠れているということです。

感謝や労いの不足

一つ目は、感謝や労いの不足です。奥様は毎日、献立を考え、買い物に行き、台所に立って調理をするという大変な労力を費やしています。それに対する感謝やねぎらいが不足していると、「どうせ適当でいいや」という投げやりな気持ちになったり、「美味しく作る意欲」が薄れてしまったりするものです。これは人間として当然の心理ではないでしょうか。

一方通行な批判

二つ目は、一方通行な批判です。「まずい」「味が薄い」「味が濃い」といった否定的な言葉だけを伝えても、相手は傷つくだけで何も改善しません。むしろ、さらに意欲を失わせてしまう可能性があります。

食の好みや価値観のすり合わせ不足

三つ目は、食の好みや価値観のすり合わせ不足です。育った家庭環境によって、味の濃淡や出汁の取り方、よく使う調味料は大きく異なるものです。お互いの「当たり前」を共有できていないことが、この問題の根本にある場合が多いのです。

配偶者のストレスや疲労

そして四つ目は、奥様側のストレスや疲労です。仕事、家事、育児、介護など、現代の女性は多くの役割を担っています。心身ともに疲れ切っている時に、料理にまで手をかけられないのは当然のことです。料理の味が落ちているのは、心身のSOSのサインである可能性もあるのです。

江戸時代の川柳に学ぶ夫婦の味わい

ここで、少し脱線しますが、興味深いエピソードをお話ししましょう。江戸時代の川柳に「女房と畳は新しい方がよい」という言葉がありました。しかし、実はこの続きがあって「古女房と古畳、どちらも味が出る」という句もあったそうです。これは、年月を経た夫婦の関係や、使い込まれた畳には、新しいものにはない深い味わいがあるという意味です。料理もまた同じで、長年の経験を積んだ味には、若い頃にはない深みがあるものなのですが、時にはそれが裏目に出ることもあるのですね。

心に響く体験談:田中さんの場合

さて、具体的な体験談をご紹介しましょう。これは実際にあったお話を基にしています。

田中さんという40代の男性のお話です。田中さんは、奥様の作る料理が毎日同じような味で、特に油と醤油の味が強すぎて、胃がもたれるようになったと悩んでいました。仕事から帰るのが憂鬱になり、残業を理由に帰宅時間を遅らせることが増えていました。

田中さんの心の中には、「こんなことで家庭がぎくしゃくするのは情けない」という自己嫌悪と、「でも毎日これを食べるのはつらい」という正直な気持ちが混在していたそうです。毎日電車の中で「今日の夕食は何だろう。また同じ味かな」と憂鬱になる自分が情けなくて、でもどうしても足が重くなってしまう。そんな複雑な思いを抱えていました。

ある日、田中さんは意を決して奥様に話しかけました。「最近、ちょっと胃がもたれるんだけど、油を少し控えめにしてもらえるかな?」できるだけ優しい口調で、批判ではなくお願いの形で伝えたのです。

すると、奥様はしばらく黙った後、ぽつりとこう言いました。その時の奥様の表情は、田中さんには忘れられないそうです。少し寂しそうで、でもどこかほっとしたような、複雑な表情でした。

「だって、あなたのお母さんの味、ずっと再現しようとしてたの。お義母さんが『うちの息子は濃い味が好きで』って言ってたから」

田中さんは驚きました。確かに実家では濃い味を好んでいましたが、社会人になり健康を気遣うようになってからは、むしろ薄味を好むようになっていたのです。しかし、それを奥様に伝えたことは一度もありませんでした。奥様は姑の言葉を真に受け、必死に田中さん好みの料理を作ろうと努力していたのです。その努力が、実は田中さんには負担になっていたとは、奥様も想像していませんでした。

田中さんは奥様の気持ちを知って、胸が熱くなったそうです。「俺の今の好みはむしろ薄味なんだ。母の情報は古いよ。ごめん、ちゃんと伝えてなくて。でも、君が一生懸命作ってくれてたのはすごく嬉しい」と心から感謝の気持ちを伝えました。

その時の奥様の反応も印象的でした。最初は少し涙ぐんでいましたが、だんだんと表情が明るくなり、「そうだったの!もっと早く聞けば良かった。私も最近、濃い味が気になってたのよ」と笑顔で答えたそうです。

それをきっかけに、二人は改めてお互いの食の好みについて話し合いました。田中さんも時々台所に立って、一緒に料理をするようになりました。奥様は「一緒に作ると楽しいし、あなたの好みもよくわかる」と喜んでくださったそうです。料理の味は徐々に改善され、田中さんも積極的に家で食事をするようになりました。

もう一つの体験談:佐藤さんの場合

もう一つの事例をご紹介しましょう。佐藤さんという30代の男性のお話です。佐藤さんの奥様は仕事がとても忙しく、料理は手抜きになりがちでした。レトルト食品や冷凍食品の組み合わせが多く、味も単調で「まずい」と感じていました。佐藤さんは不満を心の中に溜め込み、家に帰るのが憂鬱になっていました。

佐藤さんの心境を想像してみてください。仕事で疲れて帰ってきて、楽しみにしていた夕食が毎日同じような味気ない食事。「妻も働いているから仕方ない」と理性では理解しているものの、心のどこかで「もう少し手をかけた料理が食べたい」という気持ちがありました。しかし、それを口に出すのは申し訳ないという思いもあり、複雑な気持ちを抱えていたのです。

佐藤さんは毎晩、冷蔵庫を開けてレトルト食品が並んでいるのを見るたびに、小さなため息をついていました。でも奥様の疲れた様子を見ると、文句を言う気にはなれませんでした。そんな日々が続いていました。

ある週末、佐藤さんは文句を言うのをやめて、違ったアプローチを試してみました。「今日は俺が料理するよ。君はゆっくりしてて」と言って、自分が食べたい料理を一から作ってみたのです。奥様は非常に驚き、そして心から喜んでくださいました。

その時の奥様の表情を見て、佐藤さんは「ああ、妻も本当は丁寧な料理を作りたかったんだ。でも時間がなくて、申し訳ないと思っていたんだ」ということに気づいたそうです。奥様は「こんなに美味しい料理を作れるなんて知らなかった。私も頑張らなきゃ」と言って、久しぶりに本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれたそうです。

これをきっかけに、佐藤さんは「週に1回は俺が料理する日」を作りました。すると、奥様の負担が減り、心に余裕ができた奥様は、他の日の料理にも少しずつ手をかけるようになりました。また、佐藤さんが実際に料理をしてみて、その大変さを身をもって実感したことで、たとえレトルト食品の日でも「ごちそうさま。ありがとう」と自然に言えるようになったそうです。

問題解決への4つのステップ

これらの体験談を通じて、「帰りたくない」と逃避するのではなく、問題を改善するための具体的なステップが見えてきます。

1. 感謝の気持ちを最前面に置く

まず第一に、感謝の気持ちを最前面に置くことです。どんなに不満があっても、最初の一言は「いつもありがとう」から始めることが大切です。この感謝と労いの気持ちが、その後の会話を建設的なものにしてくれます。

2. 伝え方を工夫する(Iメッセージ)

第二に、伝え方を工夫することです。「あなたの料理はまずい」といった相手を責める言い方ではなく、「僕、最近ちょっと胃がもたれ気味なんだ。塩分や油を少し控えめにできると助かるな」といった、自分の状況を説明してお願いする形で伝えることが重要です。これは「Iメッセージ」と呼ばれる手法で、相手を傷つけることなく自分の気持ちを伝えることができます。

3. 背景を理解し、根本原因にアプローチする

第三に、問題の背景を理解し、根本原因にアプローチすることです。奥様が疲れているのか、料理のスキルや知識が不足しているのか、それとも情報が間違っているのか。「まずい」という結果だけでなく、その「原因」を推測し、そこに対して協力する姿勢を見せることが大切です。

4. 「消費者」から「共創者」になる

そして第四に、「消費者」から「共創者」になることです。料理をただ評価する側から、一緒に作る側に回ること。買い物に同行したり、料理を手伝ったり、自分の好きな味をデモンストレーションしたりと、能動的に関わることで、状況は大きく変わります。

夫婦の絆を深める食卓

人生の先輩である皆様には、きっとご理解いただけると思いますが、夫婦関係というのは一方通行では成り立ちません。お互いを思いやり、理解し合い、時には我慢し、時には歩み寄る。そんな日々の積み重ねが、深い絆を育んでいくのです。

料理の問題も、実は夫婦のコミュニケーションの問題なのです。「こんなことで」と思われるかもしれませんが、日々の小さなことだからこそ、おろそかにしてはいけないのです。毎日の食事は、夫婦の愛情を確認し合う大切な時間でもあるのですから。

また、年を重ねるにつれて、健康に対する意識も変わってきます。若い頃には平気だった濃い味も、今は体に負担に感じることもあるでしょう。そんな変化を率直に話し合うことで、お互いの体を気遣い合う、新しい夫婦の形が見えてくるかもしれません。